5フォース分析とは?目的・5つの要因・やり方をわかりやすく解説

5フォース分析とは?目的・5つの要因・やり方をわかりやすく解説

公開日 2026/02/17

最終更新日 2026/06/09

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5フォース分析とは、業界の収益性を左右する5つの競争要因を整理し、参入可否や競争戦略を考えるためのフレームワークです。

競争要因とは、業界内の競合、新規参入の脅威、代替品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力の5つです。これらの圧力が強い業界では、売上が伸びても利益が残りにくくなります。反対に、競争圧力が弱い領域を見つけられれば、利益を確保しやすい戦い方を考えられます。

5フォース分析は、競合企業だけを見る分析ではありません。顧客、サプライヤー、代替手段、新規参入者まで含めて、業界全体の力関係を確認する点に特徴があります。

この記事でわかること

  • 5フォース分析の定義と目的
    業界の収益性をどう評価するのか、5つの競争要因が何を意味するのかを理解できます。

  • 5つの競争要因ごとの着眼点
    業界内の競合、新規参入、代替品、買い手、売り手について、実務で何を見ればよいかを確認できます。

  • 5フォース分析の進め方
    業界定義、情報収集、評価、戦略への落とし込み、見直しまでの流れを整理できます。

  • 他フレームワークとの使い分け
    3C分析、SWOT分析、市場分析フレームワークとの関係を把握できます。

  • テンプレートとして使える記入項目
    スライドやExcelで5フォース分析をまとめるときの項目を確認できます。

5フォース分析は、業界の競争構造と収益性を把握するためのフレームワークです。

市場が大きく見えても、競合が多い、顧客の値下げ圧力が強い、代替品が増えている、仕入先の交渉力が強いといった条件がそろうと、利益は残りにくくなります。5フォース分析では、そうした収益性を下げる圧力を5つの視点で整理します。

5フォース分析の定義

5フォース分析は、マイケル・E・ポーターが競争戦略論の中で示したフレームワークです。業界の収益性は、既存競合だけでなく、新規参入、代替品、買い手、売り手を含む5つの競争要因によって左右される、という考え方に基づきます。

競争要因見ること
業界内の競合既存企業同士の競争の激しさ
新規参入の脅威新しい企業が参入しやすいか
代替品の脅威顧客が別の手段に乗り換えやすいか
買い手の交渉力顧客が価格や条件を左右しやすいか
売り手の交渉力仕入先や供給者が価格や条件を左右しやすいか

5つの圧力が強いほど、企業の利益は圧迫されやすくなります。分析の目的は、業界を評価するだけではありません。どの圧力を避けるか、どこにポジションを取るか、どの強みで対抗するかを考えることです。

出典:Michael E. Porter, Competitive Strategy: Techniques for Analyzing Industries and Competitors, Free Press, 1980.

5フォース分析が想定する「業界」とは何か

5フォース分析では、最初に「どの業界を分析するのか」を決めます。ここが曖昧だと、競合も代替品も変わり、結論がぶれます。

たとえば「飲料市場」と置くと、対象は広すぎます。「都心部のテイクアウトコーヒー市場」と置くと、コンビニコーヒー、カフェチェーン、ベーカリー、ペットボトル飲料、自宅用コーヒーなどが比較対象として見えてきます。

業界を定義するときは、次の観点を確認します。

  • 顧客が同じ目的で比較する商品・サービスか
  • 価格帯や利用シーンが近いか
  • 販売チャネルが近いか
  • 代替手段として選ばれる可能性があるか
  • 企業側ではなく、顧客側から見て同じ選択肢に入るか

BtoBでも同じです。SaaSを分析する場合、「SaaS市場」では広すぎます。「従業員300名以上の製造業向け生産管理SaaS」のように範囲を絞ると、競合、代替品、買い手の交渉力を評価しやすくなります。

※業界定義:分析対象に含める市場・顧客・用途・地域・商品カテゴリの範囲を決めること。

5フォース分析でわかること

5フォース分析でわかるのは、業界の収益性を下げる要因と、自社が戦いやすいポジションです。

わかること具体例
利益を圧迫する要因価格競争、仕入れコスト上昇、顧客の値下げ要求
参入障壁の高さ許認可、初期投資、ブランド、販売網、技術
代替品の影響顧客が別の手段で同じ課題を解決できるか
顧客との力関係大口顧客依存、価格交渉、切り替えやすさ
サプライヤーとの力関係供給元の数、独自技術、調達リスク
戦略上の打ち手差別化、顧客分散、調達先分散、ニッチ市場選定

5フォース分析は、参入可否の判断、新規事業の検討、既存事業の見直し、競争戦略の整理に使えます。

業界の競争構造と収益性

競争構造とは、業界の中で誰が利益を取りやすいかを決める力関係です。

たとえば、顧客が少数の大企業に集中している業界では、買い手の交渉力が強くなります。顧客が複数社から簡単に見積もりを取れる場合も、価格交渉が強まりやすくなります。

一方、供給元が限られている部材を使う業界では、売り手の交渉力が強くなります。原材料価格や部品供給の条件を自社だけで変えにくく、利益が圧迫されることがあります。

このように、5フォース分析では、単に「競合が多いか」だけではなく、顧客・仕入先・代替品・新規参入者を含めて、業界全体の収益構造を見ます。

自社にとっての脅威と機会

5フォース分析では、5つの競争要因を「脅威」として見るだけではありません。圧力が弱い場所を見つけると、機会にもなります。

状況脅威としての見方機会としての見方
競合が多い価格競争になりやすい特定用途に絞れば差別化しやすい
新規参入が多いシェアを奪われやすい参入者の増加で市場認知が進む
代替品が強い市場が置き換わる自社も代替手段側に展開できる
買い手が強い値下げ要求を受けやすい顧客分散や高付加価値化の必要性が見える
売り手が強い仕入れコストが上がる調達先分散や内製化を検討できる

分析結果を使うときは、「どの圧力が最も利益を削っているか」「自社はどの圧力を避けられるか」を確認します。

ここでは、5つの競争要因を実務で使う粒度で整理します。

5つの競争要因の全体像

5フォース分析は、業界を取り巻く力関係を次の5つに分けます。

要因圧力が強いときに起こること主な着眼点
業界内の競合価格競争、広告競争、利益率低下競合数、成長率、差別化、撤退障壁
新規参入の脅威新しい企業にシェアを奪われる参入障壁、初期投資、規制、販売網
代替品の脅威市場そのものが置き換わる代替手段、価格、利便性、乗り換えやすさ
買い手の交渉力値下げや条件変更を求められる顧客数、購買量、切り替えコスト
売り手の交渉力仕入れ価格や供給条件を左右される供給元数、独自性、代替調達先

5つを同じ深さで調べる必要はありません。まずは、対象業界で収益に最も影響している要因から重点的に確認します。

1. 業界内の競合(競争の激しさ)

業界内の競合は、既存企業同士の競争の強さを見ます。競合が多く、差別化が難しく、業界の成長率が低い場合、価格競争になりやすくなります。

業界内の競合を見るときの主な着眼点

  • 主要競合は何社あるか
  • 競合の規模は拮抗しているか
  • 市場は成長しているか、横ばいか、縮小しているか
  • 商品・サービスの差別化はしやすいか
  • 価格比較がしやすいか
  • 広告・販促競争が激しくなっているか
  • 撤退しにくい設備投資や契約があるか
  • 顧客が複数社を比較しやすいか

競合数が多くても、市場が成長しており、各社が異なる顧客層を取れている場合は、競争圧力が限定的なこともあります。反対に、競合数が少なくても、商品が標準化されていて価格比較されやすい場合は、競争が激しくなります。

業界内の競合が強いときの典型パターン

業界内の競合が強いときは、次のようなパターンが見られます。

典型パターン起こりやすいこと
商品の差が小さい価格や納期で比較されやすい
市場成長が鈍い既存顧客の奪い合いになる
競合の規模が近い広告・営業・価格競争が続きやすい
固定費が高い稼働率を維持するため値下げしやすい
撤退障壁が高い収益性が低くても企業が残りやすい

競争が強い業界では、正面から価格で勝つよりも、顧客セグメント、用途、地域、サポート、ブランド、技術などで違いを作る方向を考えます。

2. 新規参入の脅威

新規参入の脅威は、業界に新しい企業が入りやすいかどうかを見ます。参入しやすい業界では、既存企業の価格やシェアが脅かされやすくなります。

新規参入の脅威を見るときの主な着眼点

  • 初期投資はどの程度必要か
  • 許認可や規制はあるか
  • 専門人材や技術が必要か
  • ブランドや実績が重視されるか
  • 既存企業が販売チャネルを押さえているか
  • 顧客が新規企業へ切り替えやすいか
  • 規模の経済が効く業界か
  • デジタル化により参入障壁が下がっていないか

新規参入の脅威が強い場合は、既存顧客との関係、データ、サポート体制、技術、流通網など、簡単に模倣されにくい要素を強化します。

※参入障壁:新しい企業が市場に入るときの障害。初期投資、規制、販売網、ブランド、技術などが含まれる。

3. 代替品の脅威

代替品の脅威は、顧客が同じ課題を別の手段で解決できるかを見ます。代替品は、同じ業界の中にあるとは限りません。

たとえば、法人向けの研修サービスに対して、動画学習、社内勉強会、コンサルティング、生成AIによる学習支援などが代替手段になることがあります。

代替品の脅威を見るときの主な着眼点

  • 顧客は同じ課題を別の方法で解決できるか
  • 代替品の価格は安いか
  • 代替品の品質や利便性は高いか
  • 顧客が乗り換える手間は小さいか
  • 新しい技術で代替が進んでいないか
  • 顧客の利用目的が変わっていないか
  • 代替品が業界外から出てきていないか

代替品の脅威が強い場合は、既存商品の機能だけでなく、顧客が本当に解決したい課題を見直します。顧客の目的が変わっているなら、商品カテゴリの中で競争するより、提供価値を再定義する必要があります。

※代替品:同じニーズや課題を、別の方法で満たす商品・サービス。

4. 買い手の交渉力

買い手の交渉力は、顧客が価格や取引条件にどれだけ影響を与えられるかを見ます。BtoBでは、大口顧客への依存が高いほど、買い手の交渉力が強くなりやすいです。

買い手の交渉力を見るときの主な着眼点

  • 顧客数は多いか、少数に集中しているか
  • 大口顧客への依存度は高いか
  • 顧客は複数社から見積もりを取りやすいか
  • 商品・サービスは標準化されているか
  • 顧客が内製化できるか
  • 顧客が価格に敏感か
  • 切り替えコストは高いか
  • 契約期間や解約条件はどうなっているか

買い手の交渉力が強い場合は、顧客分散、差別化、長期契約、スイッチングコストの設計、付加価値サービスの追加などを検討します。

※スイッチングコスト:顧客が他社商品・サービスへ切り替えるときにかかる費用、手間、リスク。

5. 売り手の交渉力

売り手の交渉力は、原材料、部品、システム、人材、外部パートナーなどを提供する供給者が、価格や条件を左右できる力を指します。

売り手の交渉力を見るときの主な着眼点

  • 供給元は複数あるか
  • 特定サプライヤーに依存していないか
  • 代替できる部品・サービスはあるか
  • 供給品に独自技術や知的財産があるか
  • 仕入れ価格の変動は大きいか
  • 調達先を切り替えるコストは高いか
  • 供給停止が事業に与える影響は大きいか
  • 専門人材や外部パートナーの確保が難しいか

売り手の交渉力が強い場合は、調達先の分散、長期契約、代替部材の検討、内製化、共同開発などを検討します。

※サプライヤー:原材料、部品、システム、人材、外部サービスなどを供給する企業や組織。

5フォース分析のメリットは、競争の見方を広げられることです。競合企業だけでなく、顧客、供給者、代替品、新規参入者まで含めて、業界の構造を整理できます。

現状を整理できる

売上や利益が伸びないとき、原因は競合だけとは限りません。買い手の交渉力が強い、仕入れ価格が上がっている、代替品に需要を奪われている、といったケースもあります。

5フォース分析を使うと、収益を圧迫している要因を分解できます。

重要な課題を把握しやすい

5つの要因を並べることで、どこに対策を打つべきか見えやすくなります。

たとえば、業界内の競合よりも、買い手の交渉力が大きな問題になっている場合があります。その場合、広告や営業強化よりも、顧客分散、契約条件の見直し、付加価値化が先になることもあります。

参入・撤退の判断に使える

新規事業では、市場規模だけで判断すると危険です。市場が大きくても、競争が激しく、顧客の交渉力が強く、代替品も多い場合は、構造的に利益が出にくいことがあります。

5フォース分析を使うと、参入するか、見送るか、ニッチ市場に絞るか、提携で入るかといった選択肢を考えやすくなります。

戦略ストーリーの説得力を高められる

5フォース分析は、提案書や事業計画の説得力を高めるためにも使えます。

たとえば、次のように説明できます。

対象市場は成長しているものの、買い手の交渉力が強く、価格競争に巻き込まれやすい。そのため、価格訴求ではなく、導入支援と専門性を重視する顧客層に絞る。

このように、分析結果から戦略の方向性までつなげると、単なる情報整理ではなく、意思決定の根拠になります。

5フォース分析は、次の5ステップで進めます。

  1. 業界の定義を決める
  2. 5要因の情報を収集する
  3. 5要因を評価する
  4. 戦略に落とし込む
  5. 定期的に見直す

STEP1. 業界の定義を決める

最初に、分析対象の業界を定義します。業界の範囲によって、競合、代替品、買い手、売り手が変わります。

業界範囲を決めるときのポイント

業界範囲を決めるときは、次の点を確認します。

  • 対象地域はどこか
  • 顧客は法人か個人か
  • どの用途・課題を対象にするか
  • 価格帯はどこまで含めるか
  • オンラインとオフラインを両方含めるか
  • バリューチェーンのどこを対象にするか
  • 顧客が比較する代替手段を含めるか

「自社が属している業界」ではなく、「顧客が比較検討する範囲」で考えると、実務に使いやすくなります。

オンライン・オフラインが混在するケースの考え方

ECと実店舗、SaaSとSI、オンライン診療と対面診療のように、オンラインとオフラインが混在する業界では、顧客の利用目的を基準にします。

たとえば、法人向け研修であれば、対面研修、オンライン研修、動画学習、社内研修、外部講師派遣が比較対象になることがあります。提供形態は違っても、顧客が「社員教育」という目的で比較しているなら、同じ分析範囲に含める候補になります。

範囲を広げすぎると分析がぼやけます。最初は広めに候補を出し、顧客が実際に比較している範囲に絞り込みます。

STEP2. 5要因の情報を収集する

業界を定義したら、5つの要因ごとに情報を集めます。最初から完璧なデータを集める必要はありません。まずは社内データと公開情報でたたき台を作り、不足する論点を追加調査します。

社内データから集める情報

社内データは、短時間でたたき台を作るときの起点になります。

情報源確認すること
営業メモ競合名、失注理由、価格交渉、顧客の比較軸
顧客問い合わせ代替手段、導入障壁、要望、予算感
受注・失注データ競合別の勝率、顧客規模、価格帯
契約データ契約期間、解約理由、更新率、値引き率
調達・購買データ主要サプライヤー、仕入れ価格、供給リスク
サポート履歴顧客の不満、運用負荷、切り替えリスク

営業、マーケティング、カスタマーサポート、購買部門などに情報が分散していることが多いため、担当者を決めて集約します。

社外データから集める情報

社外データでは、市場全体、競合、規制、技術、サプライチェーンを確認します。

情報源確認すること
公的統計市場の土台となる人口、産業、家計、商業、労働など
官公庁資料法規制、制度、補助金、産業政策
業界団体資料業界規模、出荷量、企業数、技術動向
企業IR主要企業の売上、事業方針、投資、地域展開
特許情報技術開発の方向性、主要出願人
市場調査レポート市場規模、成長率、主要企業、セグメント別動向

国内の公的統計は、e-Statで各府省等が公表する統計データを確認できます。技術動向を調べる場合は、J-PlatPatで特許・実用新案・意匠・商標を検索できます。海外市場では、JETROの調査レポートも参考になります。

出典:総務省統計局・統計センター「政府統計の総合窓口(e-Stat)」https://www.e-stat.go.jp/
出典:独立行政法人工業所有権情報・研修館「J-PlatPat」https://www.j-platpat.inpit.go.jp/
出典:日本貿易振興機構(JETRO)「調査レポート」https://www.jetro.go.jp/world/reports/

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短時間で集めるためのコツ

限られた時間で分析する場合は、7〜8割のたたき台を先に作ります。最初から完全な調査を目指すと、結論が遅れます。

短時間で進めるときは、次の順番が使いやすいです。

  1. 業界定義を1文で書く
  2. 主要競合を3〜5社挙げる
  3. 顧客が比較する代替手段を挙げる
  4. 営業・顧客接点から失注理由を集める
  5. 公的統計や業界資料で市場の概況を確認する
  6. 不足情報を「追加調査リスト」に分ける

根拠が薄い項目は、断定せず「仮説」として扱います。

STEP3. 5要因を評価する

情報を集めたら、5つの要因ごとに圧力の強さを評価します。

評価の軸とスコアリングの方法

評価は、簡易的に「強い・中・弱い」の3段階で十分です。必要に応じて、1〜5点でスコアリングします。

評価意味
強い収益を大きく圧迫する大口顧客依存が高く、値下げ要求が強い
条件次第で影響する競合は多いが、顧客セグメントで差別化できる
弱い影響は限定的参入障壁が高く、新規参入が少ない

評価するときは、必ず理由を書きます。「買い手の交渉力:強い」だけでは使えません。「売上の多くが少数の大口顧客に依存しており、更新時に値下げ要求が発生しやすい」のように書きます。

仮説ベースでまとめるときの注意点

初期分析では、情報が不足することがあります。その場合は、仮説としてまとめます。

書き方
事実主要顧客の多くが複数社から相見積もりを取っている
解釈買い手の交渉力は強い可能性がある
追加調査直近1年の値引き率、失注理由、契約更新時の交渉内容を確認する

事実、解釈、追加調査を分けると、後から検証しやすくなります。

STEP4. 戦略に落とし込む

5フォース分析の結果は、戦略や施策に変換します。

5フォース分析から導ける主な戦略の方向性

圧力が強い要因戦略の方向性
業界内の競合顧客セグメントを絞る、差別化軸を変える
新規参入ブランド、販売網、データ、技術で参入障壁を作る
代替品提供価値を見直す、代替手段側に展開する
買い手顧客を分散する、スイッチングコストを高める
売り手調達先を分散する、代替品を探す、内製化を検討する

戦略に落とすときは、脅威をすべて解消しようとしないことが大切です。影響が大きく、自社が対策できる要因から着手します。

提案書や事業計画への落とし込み方

提案書や事業計画では、5フォース分析を表だけで終わらせません。次の流れでまとめると、読み手が判断しやすくなります。

  1. 対象業界の定義
  2. 5つの競争要因の評価
  3. 最も大きい脅威
  4. 自社が取れるポジション
  5. 推奨する戦略
  6. 追加調査が必要な論点

たとえば、次のように書きます。

対象市場は成長しているが、買い手の交渉力が強く、価格競争に巻き込まれやすい。自社は大口顧客依存を避け、専門性を評価する中堅企業向けに絞る。初期導入支援と運用サポートを差別化軸にする。

STEP5. 定期的に見直す

5フォース分析は、一度作って終わりではありません。業界構造は変化します。

見直しのタイミングとトリガー事象

次のような変化があったときは、見直しのタイミングです。

  • 法規制が変わった
  • 大手企業が新規参入した
  • 代替技術が普及した
  • 原材料や部品価格が変動した
  • 顧客の購買行動が変わった
  • 主要競合が価格改定した
  • 重要サプライヤーの供給条件が変わった
  • 自社の主要顧客構成が変わった

年度計画や中期計画のタイミングでも見直すと、戦略の前提を確認できます。

ここでは、5フォース分析の見方を理解するために、業界別の例を紹介します。以下は一般的な整理例であり、特定企業の実績や成果を示すものではありません。

小売・アパレルの例

小売・アパレルでは、競合の多さ、価格比較のしやすさ、ECや中古品などの代替手段が論点になります。

小売・アパレルでの主な着眼点

要因着眼点
業界内の競合ファストファッション、専門店、EC専業、百貨店、古着
新規参入D2Cブランド、海外ブランド、ECモール出店
代替品古着、レンタル、フリマアプリ、低価格ブランド
買い手価格比較のしやすさ、ブランド乗り換えのしやすさ
売り手原材料、縫製工場、物流、為替、海外生産体制

この業界では、価格だけで競争すると利益が圧迫されやすくなります。素材、機能、ブランド、店舗体験、供給安定性など、価格以外の選択理由を作れるかが論点になります。

カフェ業界の例

カフェ業界では、直接競合だけでなく、コンビニコーヒー、ペットボトル飲料、自宅用コーヒーなども代替手段になります。

カフェ業界での主な着眼点

要因着眼点
業界内の競合カフェチェーン、個人店、ベーカリー、ファストフード
新規参入小規模店舗、キッチンカー、異業種店舗
代替品コンビニコーヒー、缶・ペットボトル飲料、自宅用マシン
買い手価格、立地、待ち時間、席の使いやすさ
売り手コーヒー豆、乳製品、店舗賃料、人件費

単なるコーヒーの提供だけで見ると、代替品は多くなります。一方で、作業しやすい空間、打ち合わせのしやすさ、ブランド体験まで含めると、競争の軸は変わります。

自動車業界の例

自動車業界では、既存メーカー同士の競争に加え、EV、ソフトウェア、電池、半導体、モビリティサービスなども論点になります。

自動車業界での主な着眼点

要因着眼点
業界内の競合完成車メーカー、地域別シェア、価格帯、ブランド
新規参入EVメーカー、IT企業、部品メーカーの参入
代替品公共交通、カーシェア、ライドシェア、自転車
買い手法人・個人の価格感度、リース、残価、維持費
売り手電池、半導体、重要部品、素材、ソフトウェア

従来は完成車メーカー同士の競争が中心でしたが、EVやソフトウェアの比重が高まると、売り手の交渉力や新規参入の見方も変わります。

自社業界に当てはめるときの考え方

自社業界に当てはめるときは、業界別の例をそのまま写すのではなく、顧客の比較対象に置き換えます。

次の順番で確認します。

  1. 顧客は何を解決したくて購入しているか
  2. 顧客はどの商品・サービスと比較しているか
  3. その比較対象は同業他社だけか、代替手段も含むか
  4. 自社はどの顧客層なら価格競争を避けられるか
  5. 最も利益を削っている要因はどれか

5フォース分析は、外部環境の中でも「業界構造」を見るフレームワークです。他のフレームワークと組み合わせると、分析から戦略までつなげやすくなります。

3C分析との違いと使い分け

3C分析は、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3視点から勝ち筋を考えるフレームワークです。

5フォース分析は、業界の収益性や競争圧力を深掘りします。3C分析のCompetitorをより広く見たいときに役立ちます。

フレームワーク主な問い
3C分析顧客は誰か、競合は誰か、自社は何で勝てるか
5フォース分析その業界は利益が出やすい構造か、どの圧力が強いか

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SWOT分析との違いと使い分け

SWOT分析は、強み、弱み、機会、脅威を整理するフレームワークです。

5フォース分析で見えた競争圧力は、SWOT分析の「機会」や「脅威」に入れることができます。たとえば、代替品の脅威が強い場合は「脅威」、参入障壁が高く既存企業が守られやすい場合は「機会」として整理できます。

フレームワーク主な役割
5フォース分析業界構造と競争圧力を分析する
SWOT分析内部要因と外部要因を統合し、戦略オプションを考える

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フレームワークを組み合わせた分析ストーリーの流れ

事業戦略や提案書では、次のように組み合わせると流れが作りやすくなります。

  1. 市場調査で市場規模や成長率を確認する
  2. 5フォース分析で業界の競争圧力を見る
  3. 3C分析で顧客・競合・自社の関係を整理する
  4. SWOT分析で強み・弱み・機会・脅威にまとめる
  5. STP分析で狙う顧客と立ち位置を決める
  6. 4P分析で施策に落とし込む

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ここでは、実務で5フォース分析をまとめるときの記入項目を整理します。独自のダウンロードテンプレートではなく、スライドやExcelにそのまま転記できる項目例として使ってください。

スライド形式テンプレートの構成例

役員や上司に説明する場合は、1〜2枚で要点を伝えます。

項目記入内容
分析対象業界名、地域、顧客、用途、対象期間
総合評価収益性が高いか、低いか、条件付きか
5つの要因各要因の評価と根拠
最大の脅威利益を最も圧迫している要因
機会圧力が弱い領域、狙える顧客層
推奨戦略差別化、回避、集中、提携、撤退など
追加調査判断前に確認すべき情報

Excel形式テンプレートの構成例

Excelで整理する場合は、5つの要因を行に置き、事実、評価、示唆を列に分けます。

要因事実評価示唆追加調査
業界内の競合主要競合、価格、シェア、差別化要素強・中・弱競争回避や差別化の方向競合別売上、失注理由
新規参入参入障壁、許認可、初期投資強・中・弱参入障壁を作れるか新規参入企業の動向
代替品代替手段、価格、利便性強・中・弱提供価値の見直し顧客の代替利用実態
買い手顧客集中、価格交渉、切り替えやすさ強・中・弱顧客分散や高付加価値化値引き率、更新交渉
売り手供給元、独自性、調達リスク強・中・弱調達先分散や内製化仕入れ価格推移

実務でそのまま使える記入項目リスト

5フォース分析を始めるときは、次の項目を埋めると進めやすくなります。

  • 分析対象業界
  • 対象地域
  • 対象顧客
  • 対象商品・サービス
  • 主要競合
  • 代替品・代替手段
  • 新規参入者
  • 主な買い手
  • 主な売り手・サプライヤー
  • 5つの要因ごとの評価
  • 最も大きい脅威
  • 自社が取れる戦略
  • 追加調査が必要な情報
  • 出典・調査時点

チームで使うときの運用ルール例

チームで使う場合は、記入ルールをそろえます。

  • 事実と解釈を分ける
  • 評価には理由を書く
  • 出典と調査時点を記載する
  • 仮説は仮説と明記する
  • 評価基準を「強・中・弱」で統一する
  • 不足情報は追加調査リストに分ける
  • 1回作って終わらせず、事業環境の変化に合わせて更新する

5フォース分析は何に使えますか?

業界の収益性、競争圧力、参入可否、撤退判断、競争戦略の検討に使えます。既存競合だけでなく、代替品、新規参入、買い手、売り手まで含めて、利益を圧迫する要因を整理できます。

5フォース分析と3C分析は何が違いますか?

3C分析は、顧客、競合、自社の関係から勝ち筋を考えるフレームワークです。5フォース分析は、業界全体の競争圧力と収益性を見るフレームワークです。3C分析の前後で使うと、競合環境をより広く捉えられます。

5フォース分析はBtoBでも使えますか?

BtoBでも使えます。むしろ、大口顧客への依存、サプライヤー依存、代替手段、参入障壁などを整理しやすいため、法人向け事業との相性があります。買い手の交渉力や売り手の交渉力は、BtoBで特に重要な論点です。

5フォース分析で最初に決めるべきことは何ですか?

最初に、分析対象の業界を定義します。地域、顧客、用途、価格帯、販売チャネル、対象期間を決めます。業界定義が曖昧だと、競合や代替品の範囲がぶれます。

5フォース分析はどのくらいの頻度で見直しますか?

法規制、技術、原材料価格、競合、顧客行動に大きな変化があったときに見直します。新規事業や海外展開では、検討初期だけでなく、事業計画の更新時にも確認します。

5フォース分析は、業界の収益性を左右する5つの競争要因を整理するフレームワークです。

競合企業だけでなく、新規参入、代替品、買い手、売り手まで見ます。これにより、なぜ利益が出にくいのか、どの圧力を避ければよいのか、どの顧客層やポジションなら戦いやすいのかを考えられます。

実務で使うときは、まず業界を顧客視点で定義します。そのうえで、社内データと社外データを集め、5つの要因を評価します。最後に、脅威の強い要因への対策や、自社が取りに行くポジションを整理します。

5フォース分析の結果は、3C分析やSWOT分析に接続すると、事業戦略や提案書に落とし込みやすくなります。市場規模、規制、競合情報などは変化するため、具体的な数値や制度を使う際は、閲覧時点で最新の公的統計、官公庁資料、企業公開情報、市場調査レポートを確認してください。

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