市場調査の方法は? 手法や具体的な手順、調査項目を詳細に解説

市場調査の方法は? 手法や具体的な手順、調査項目を詳細に解説

公開日 2026/02/06

最終更新日 2026/02/17

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ビジネスを成功させるうえで、市場調査は欠かせない工程のひとつです。自社の商品やサービスがどのように受け入れられているのかを把握し、顧客ニーズとマーケットの動向を正確に捉えることで、戦略的な意思決定を行うことができます。この記事では、市場調査の基本的な考え方とその重要性、具体的な手法や進め方のステップなどを詳しく解説します。

市場調査とは、数値や証言を集めて「現状を知る」ための活動であり、マーケティングリサーチ(未来の戦略立案)の一部です。

市場調査は、企業が自社の製品やサービスを顧客目線で評価し、世の中のニーズや競合状況を把握するためのプロセスです。公的機関の定義では、単なるデータ収集にとどまらず、「顕在化していない欲求を掘り起こす」ための戦略的な手段としても位置付けられています。

[出典: J-Net21(中小企業基盤整備機構) https://j-net21.smrj.go.jp/startup/manual/list2/2-3-4.html]

市場調査の概要

市場調査は、市場規模や需要動向、顧客属性、競合企業の動きなどを調べる活動を指します。たとえば新商品を投入するとき、自社製品の認知度や購入意欲を高めるために、どの層を狙うべきかを検討する際にも市場調査が役立ちます。こうした情報を収集し分析することで、投資リスクを抑えながら成功確度の高いビジネスプランを立てやすくなるのです。

マーケティングリサーチとの違い

市場調査とマーケティングリサーチは混同されがちですが、役割に明確な違いがあります。

項目市場調査 (Market Research)マーケティングリサーチ (Marketing Research)
主目的「現状」の把握(数値・事実の収集)「未来」の対策(戦略・施策の立案)
対象市場規模、競合、顧客の声商品開発、価格設定、販促、流通など全般
時間軸過去〜現在現在〜未来
関係性マーケティングリサーチの基礎データとなる市場調査の結果を活用する包括的な活動

市場調査で「数字と事実」を集め、それをもとに「どう売るか」を考えるのがマーケティングリサーチです。

正しい手法、プロセスで市場調査を行なう最大のメリットは「思い込み」を排除し、事実に基づいた意思決定でビジネスの失敗リスクを最小化できることです。

正確な市場調査のやり方を身につけると、製品やサービス展開を失敗しにくい形で進めることができます。顧客が何を求め、どのような点で満足するかを調べることで、自社の強みを明確化しやすくなるからです。

顧客ニーズの把握

顧客ニーズを理解することは、あらゆるビジネスの根幹です。市場調査を通じて、ユーザーが欲しいと感じる機能やサービス、解決したい課題を掴むことができます。そうした生の声を商品開発やサービス改善に反映させることで、競合との差別化にもつなげられます。

競合分析による差別化

競合他社の動向を調べるのも、市場調査の重要な一部です。業界全体でどのような戦略が取られているのかを知ることで、自社独自のポジションを築きやすくなります。目指す顧客層や価格帯のズレを調整しながら、顧客が求める価値を先取りして提供できる点も市場調査の大きなメリットです。

意思決定・リスク回避

正確なデータや顧客の声に基づいた意思決定は、ビジネスの失敗リスクを大幅に減らします。勘や経験だけに頼らず、数字と事実を踏まえて判断できるため、効果的なマーケティング戦略を立てる下地ができます。

市場調査の種類は、分類方法にもよりますが「定量調査」と「定性調査」とに大別されます。「全体像(数値)」を知りたいなら定量調査、「理由(心理)」を知りたいなら定性調査を選びます。

調査を行う際には、数値データ中心の定量調査と、インサイト中心の定性調査を理解し、使い分けることが重要です。国際協力機構(JICA)の定義においても、定量情報は「全体の構造や傾向」、定性情報は「対象の質的側面(背景・理由)」を示すものとして区別されています。

[出典: 国際協力機構(JICA) https://www.jica.go.jp/jica-ri/IFIC_and_JBICI-Studies/jica-ri/publication/archives/jica/field/pdf/200701_aid_05.pdf]

種類定量調査 (Quantitative)定性調査 (Qualitative)
特徴数値・統計で実態を測る言葉・感情で背景を探る
手法例ネットアンケート、会場調査インタビュー、行動観察
強み客観的なデータが得られる(〇%が満足)「なぜ」という深い理由がわかる
弱み理由や背景事情が見えにくいサンプル数が少なく、全体化しにくい

定量調査とは

定量調査は、アンケート結果や売上データなど、数値として可視化できる情報を集める手法です。多くの母数を対象にすることで、全体の傾向や割合を把握しやすくなります。大規模なデータを用いるため、結果に対する信頼性が高い点が魅力と言えます。

定性調査とは

定性調査は、インタビューやグループディスカッションなどを通じて、より深い意見や感情を生の声として取り込む手法です。なぜその商品を欲しいと思ったのか、どんな課題に直面しているのかなど、数値では見えにくいインサイトを詳細に捉えることができます。

使い分けのポイント

まずは定量調査で市場全体の規模や特定の傾向を捉え、興味深いグループや背景をさらに定性調査で掘り下げる流れが理想的です。

  • Step 1(定量): 「20代の30%が商品Aを知っているが、購入率は5%だ」と判明。
  • Step 2(定性): 「なぜ知っているのに買わないのか?」をインタビューで深掘りする。

目的と予算に応じて最適な手法を選びます。Web完結型は低コストですが、対面型は情報の質が高くなります。

市場調査のやり方は多岐にわたりますが、それぞれの手法には得意分野や集めやすいデータがあります。

手法分類特徴・メリット注意点
アンケート調査定量最も一般的。低コストで大量の回答を収集可能。質問設計が悪いと正確なデータが取れない。
インタビュー調査定性1対1で深掘りできる(デプスインタビュー)。本音を引き出しやすい。時間とコストがかかる。インタビュアーのスキルが必要。
街頭調査定量/定性その場のリアルな反応が見られる。特定エリアの通行人に有効。天候や立地に左右される。許可が必要。
電話調査定量インターネットを使わない高齢者層などにもアプローチ可能。応答率が低下傾向にある。
インターネット調査定量スピードが早く、コストが安い。ネットユーザーに偏るため、属性の偏りに注意。
覆面調査定性実際のサービス品質を客観的にチェックできる(ミステリーショッパー)。調査員の主観が入らないよう基準統一が必要。
ホームユーステスト定性実際の生活環境で商品を使ってもらい、リアルな感想を得る。商品発送の手間やコストがかかる。
デスクリサーチ-既存の官公庁統計やレポートを調べる。コストゼロで開始できる。欲しいドンピシャのデータがない場合がある。

アンケート調査

アンケート調査は、オンラインフォームや紙媒体などで複数の設問を設定し、大勢の回答を収集するオーソドックスな方法です。総務省統計局のガイドラインでは、回答形式として「単一回答(SA)」と「複数回答(MA)」を適切に使い分けることが推奨されています。

[出典: 総務省統計局 https://www.stat.go.jp/naruhodo/12_ppdac/plan/plan2.html]

インタビュー調査

インタビュー調査では実際の顧客やターゲット層と直接対話し、より深い意見を聞き取ります。定性調査として行われることが多く、インタビュイーの本音や課題意識を詳細に把握できるのが特徴です。

街頭調査

街頭調査は、駅前や商業施設などで通行人に話を聞き、短時間で多くの意見を集める方法です。突発的な反応や、リアルタイムの感想を拾いやすいため、知名度や認知度調査には適しています。

電話調査

電話調査は、特定のリストをもとに電話をかけ、回答を得る手法です。あらかじめ顧客情報を持っている場合など、特定の層を対象に精度の高いデータを取得するのに向いています。

インターネット調査

Webアンケートやオンラインフォーラム、SNSなどを活用して意見を募集する方法です。総務省の資料でも、インターネット調査は費用や手間を削減できる一方、調査対象がネット利用者に限定される点(カバレッジ・バイアス)に留意すべきとされています。

[出典: 総務省統計局 https://www.stat.go.jp/naruhodo/12_ppdac/plan/plan1.html]

覆面調査

覆面調査(ミステリーショッパー)は、調査員が一般顧客を装って店舗やサービスを利用し、その体験を詳細に報告する方法です。実際の接客態度や設備の使い勝手など、リアルな利用状況を知るのに最適です。

ホームユーステスト

ホームユーステストは、商品サンプルを実際に自宅で使用してもらい、感想や使い勝手を記録してもらう調査方法です。利用シーンが自然な環境になるため、商品やサービスのリアルな評価を得られます。

デスクリサーチ(既存情報調査)

デスクリサーチは、図書館やインターネット上にある統計情報や公開データ、学術論文などの二次情報から必要な知見を得る手法です。

例えば、人口動態なら「国勢調査」、家計の支出なら「家計調査」など、政府統計(e-Stat)を活用することで、信頼性の高いデータを無料で入手できます。

[出典: 総務省統計局 e-Stat https://www.e-stat.go.jp/]

ビッグデータ活用・SNS分析

近年注目が高まっているのが、SNS上の投稿や購買履歴などのビッグデータを分析する方法です。リアルタイムで消費者の声を把握できるため、トレンドを早めに察知しやすくなります。

大前提として、市場調査を行なう際はいきなりアンケートを作りはじめるのではなく、まずは「目的の明確化」と「仮説立て」に注力することが重要です。

市場調査を円滑に進めるためには、以下の7ステップを順序通りに進めることが大切です。

ステップ1:目的の明確化

調査を行う前に、何を得たいのか、どんな課題を解決したいのかを明確にします。「売上が落ちている原因を知りたい」のか「新商品の価格受容性を知りたい」のかによって、聞くべき質問は全く異なります。

ステップ2:期間・予算・調査ターゲットの設定

調査に必要な期間や、投入可能な予算を現実的に設定します。特に調査ターゲット(母集団)の条件をしっかりと詰めることで、無駄な調査を防げます。

  • 悪い例: 20代〜60代の男女(広すぎる)
  • 良い例: 過去3ヶ月以内にフィットネスジムに入会した30代女性

ステップ3:既存情報の収集

いきなり独自調査を始めるのではなく、まずは既存のデスクリサーチや公開データを調べます。類似の調査レポートや政府の統計資料を活用することで、コストをかけずに仮説の精度を高められます。

ステップ4:調査方法の選定と設計

定量・定性のいずれを主軸にするか決め、具体的な質問項目を設計します。質問文は「誘導尋問」にならないよう中立的に作成する必要があります。

ステップ5:調査の実施

設計した通りにアンケートを配布したり、対象者へのインタビューを実行します。スケジュール管理を徹底し、回答の進捗が悪ければリマインドを行うなどの運用が必要です。

ステップ6:結果の集計・分析

得られた回答やデータを集計し、統計処理やグラフ化などで全体像を整理します。単純集計だけでなく、属性ごとの違いを見る「クロス集計」を行うと、より深い示唆が得られます。

ステップ7:アクションプランの策定

最終的に、分析結果をどう事業に反映させるのか決定します。「調査して終わり」にせず、「A案とB案のどちらを採用するか」といった具体的なアクションにつなげることがゴールです。

結論:最も注意すべきは「バイアス(偏り)」です。自分たちが欲しい回答へ誘導しないよう意識する必要があります。

調査前の仮説設定

「たぶんこうだろう」という仮説を持ってから調査に臨むことで、結果が出たときの検証スピードが上がります。「仮説が正しかったか、間違っていたか」を確認することが調査の本質です。

質問設計の最適化

質問が曖昧だったり、複数の意図を含んでいると、正確な回答を得にくくなります。「使いやすくて便利な商品ですか?」という質問は、「使いやすい」と「便利」のどちらを聞いているか不明確なため避けるべきです。

ターゲット選定の重要性

調査によって得たい答えを持っている人に質問をしなければ、意味がありません。実際に商品を買う可能性のある「見込み客」に絞って調査を行うことが、データの質を高めます。

バイアスに注意する

回答者の属性や質問の仕方に偏りがあると、調査結果が歪みます。

  • サンプリングバイアス: 調査対象が特定の層に偏ること(例:昼間の街頭調査で高齢者ばかりになる)。
  • 誘導尋問: 「この商品は素晴らしいと思いますか?」といった聞き方。

法的・倫理的配慮

個人情報の取り扱いやプライバシーの保護は必須です。個人情報保護法を遵守し、利用目的を明示した上で同意を得る必要があります。

結論:コスト重視なら「自社(セルフ型)」、品質と分析深度を重視するなら「外部委託(プロ)」を選びます。

比較項目自社実施(セルフ型アンケート等)外部委託(調査会社)
コスト低い(数万円〜)高い(数十万円〜数百万円)
手間設計・集計すべて自分で行う丸投げ可能
品質素人設計になりがちプロの設計で精度が高い
スピード即日実施可能打ち合わせ等で数週間かかる
向いているケース社内資料用、簡単な仮説検証重要な経営判断、大規模調査

自社で行う場合のメリット・デメリット

自社調査では、Web作成ツールなどを使えばコストを数千円〜数万円に抑えられます。しかし、設問設計のミスに気づきにくく、集計結果が役に立たないリスクもあります。

調査会社やリサーチ会社に依頼する場合

外部の調査会社は、豊富な実績や蓄積されたノウハウを持っています。第三者視点で客観的なデータを取得できるため、対外的な発表資料や、巨額の投資判断を行う際にはプロへの依頼が推奨されます。

中小企業等でも市場調査を活用して、ニッチな市場で成功している事例は多数あります。

新商品開発での活用

事例: 石川県のろうそくメーカーは、国内市場の縮小を受けて海外展開を模索。海外見本市での反応調査(定性調査)を経て、和ろうそくが欧州で「インテリア」として受け入れられることを発見し、販路拡大に成功しました。

[出典: 中小企業庁 ミラサポPlus https://mirasapo-plus.go.jp/hint/18040/]

既存商品の改善に役立てる

既存商品に寄せられているクレームや要望を集約し、改善点を抽出するのも市場調査の重要な用途です。ユーザーの声を真摯に受け取ることで、機能追加やデザイン変更など、具体的なアップデートを迅速に行えます。

サービス導入後の顧客満足度調査

サービスを導入した後にも定期的に顧客の声を収集し、期待されている点と実際のギャップを分析します。ポジティブな評価だけでなく、改善要望を積極的に吸い上げることで、長期的に選ばれるサービスを目指せます。

効果的な市場調査を行うためには、目的の明確化と正しい手法・設計が不可欠です。定量調査で「市場の事実」を知り、定性調査で「顧客の心理」を解き明かすことで、ビジネスの成功確度は飛躍的に高まります。まずは、手軽なデスクリサーチやセルフ型アンケートから始めてみることをお勧めします。

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