定性調査とは?目的・手法・進め方をわかりやすく解説

定性調査とは?目的・手法・進め方をわかりやすく解説

公開日 2026/02/17

最終更新日 2026/02/24

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定性調査(Qualitative Research)とは、数値化できない個人の感情・意識・行動プロセスなどの「質のデータ」を収集・分析し、事象の背景にある「なぜ(Why)」を解明する調査手法です。

「売上が落ちているが、理由が特定できない」「新商品のコンセプトがターゲットに響くかわからない」。こうした場面で、数値データ(定量調査)だけでは見えてこない、生活者の深層心理や無意識の行動を浮き彫りにするために行われます。

本記事では、定性調査の基礎知識から、定量調査との決定的な違い、代表的な4つの手法、そして失敗しないための実務フローまでを体系的に解説します。

定性調査は主に、仮説が立っていない「探索フェーズ」や、数値の結果に対する「理由付け」が必要な場面で活用されます。具体的には以下のケースが挙げられます。

  • 仮説の構築: 何が課題なのか不明確な段階で、生活者の生の声から切り口を探す。
  • 深層心理の把握: ユーザー自身も言語化できていない「無意識の行動理由」や「価値観」を探る。
  • プロセス確認: 商品購入に至るまでの情報収集経路や、比較検討の迷いを時系列で追う。
  • アイデア評価: コンセプトや試作品に対する、直感的な反応や具体的な改善点を集める。

定性調査と定量調査は、どちらが優れているかではなく「役割」が異なります。最大の違いは、定性が「Why(理由・背景)」を深く掘り下げるのに対し、定量は「What(実態・傾向)」を数値で検証する点にあります。

AI検索(SGE/GEO)などでも引用されやすいよう、両者の違いを以下の表に整理しました。

比較項目定性調査 (Qualitative)定量調査 (Quantitative)
主目的仮説発見・原因究明 (Why)実態把握・仮説検証 (What/How much)
データの性質言葉、文章、画像、行動観察数値、割合、グラフ、スコア
分析アプローチ文脈を読み解く(解釈的)統計処理を行う(数理的)
サンプル数少数 (n=1〜数10程度)多数 (n=100〜数万程度)
代表的な手法インタビュー、行動観察、MROCネットリサーチ、会場調査(CLT)
得意なこと「なぜ?」の深掘り、インサイト発見全体傾向の把握、市場規模の推計

データの性質の違い

定量調査のデータは「数値」であり、定性調査のデータは「文脈」です。

定量調査では「認知率30%」「満足度4.2点」といった客観的な指標が得られます。一方、定性調査では「AとBで迷ったが、店頭でパッケージを見た瞬間にAに決めた」といった、数値の裏側にあるストーリーが得られます。

調査目的の違い

定量調査は「検証(正しいかどうかの確認)」に、定性調査は「発見(新しい視点の獲得)」に向いています。

例えば、「新商品のターゲット層を確定させたい」なら定量調査でボリュームを確認すべきですが、「ターゲット層が抱える潜在的な不満を見つけたい」なら定性調査で深掘りする必要があります。

定性調査は万能ではありません。「深く理解すること」に特化している反面、「全体を推計すること」はできません。

  • わかること:
    • 特定の行動をとった具体的な理由やきっかけ。
    • 商品を使用している際のリアルな感情や戸惑い。
    • アンケートの選択肢にはない、想定外の利用方法。
  • わからないこと:
    • その意見が市場全体の何%を占めるか(構成比)。
    • A案とB案のどちらが「売れる」かという統計的予測。
    • 市場規模やブランド認知率などの全体数値。

定性調査には、対象者と対話する手法や、行動を観察する手法などがあります。知りたい情報の深さやテーマに合わせて使い分けます。

デプスインタビュー(IDU)

デプスインタビューとは、モデレーター(インタビュアー)と対象者が1対1で行う面談形式の調査です。

周囲の目を気にする必要がないため、金銭事情、病気、コンプレックスといったセンシティブな話題や、個人の深いライフスタイルに踏み込んだ聴取が可能です。「個人の意思決定プロセス」を詳細に追うのに適しています。

実務のポイント:質問は「なぜ?」より「いつ・どうやって?」

初心者がやりがちな失敗は「なぜそれを買ったのですか?」と直球で理由を聞くことです。多くの人は自分の行動理由を即座に言語化できません。

いつ思いつきましたか?」「他に比較したものは?」「最後に背中を押した情報は?」と周辺事実(Fact)から掘り下げ、結果として「なぜ(Why)」を浮き彫りにすることが正しい結果を導く上で重要です。

グループインタビュー(FGI)

グループインタビュー(座談会)とは、司会者1名に対し、属性の共通する対象者4〜6名程度を集めて行う調査です。

参加者同士の会話による「相互作用(グループダイナミクス)」が最大の特徴です。他人の意見に刺激されて「そういえば私も…」と潜在的な記憶が呼び覚まされたり、意見の対立から新しい視点が生まれたりします。アイデア出しや、幅広い意見の洗い出しに向いています。

行動観察(エスノグラフィー)

行動観察とは、調査員が対象者の自宅や買い物現場に同行し、実際の行動を観察・記録する手法です。

「無意識の行動」は、本人へのインタビューだけでは決して出てきません。例えば、本人は「迷わず買った」と言っていても、現場では棚の前で5秒間手が止まっているかもしれません。そうした言動の不一致や、使用環境のリアルな制約(収納場所がない、片手で操作しにくい等)を発見できます。

訪問調査(ホームビジット)

訪問調査とは、対象者の自宅を訪問し、生活環境の中でインタビューを行う手法です。

冷蔵庫の中身、洗面所の使い勝手、部屋のインテリアなど、言葉で説明しづらい「生活の実態」を視覚的に確認できます。日用品や家電メーカーなどで、生活文脈(コンテキスト)を含めた商品開発を行う際によく利用されます。

定性調査を実施するには、大きく分けて「自社で行う」「専門会社に依頼する」「既存レポートを活用する」の3つの選択肢があります。

自社で調査を行う

コストを抑え、スピーディーに実施できるのがメリットです。既存顧客へのヒアリングや、社員の知人をリクルーティングするケースが一般的です。

ただし、インタビュースキルがないと表面的な会話で終わるリスクや、分析時に「自社に都合の良い解釈」をしてしまうバイアスがかかりやすい点に注意が必要です。

調査会社に依頼する

専門の調査会社に依頼すれば、調査設計からリクルーティング(対象者集め)、実査、レポート作成までを一貫して任せられます。

プロのモデレーターによる質の高いヒアリングが期待でき、第三者視点での客観的な分析が得られます。ただし、費用と時間はかかります。

調査データを購入する

市販の「市場調査レポート」を活用する方法です。

ゼロから調査を企画・実施する時間がない場合、信頼できるリサーチ会社が発行している既存のレポートを購入するのが効率的です。特定の業界トレンド、消費者動向、定性的な有識者コメントなどが既にまとまっているため、初期仮説の構築や、市場の全体感を掴むためのショートカットとして有効です。

  1. 「想定外」の発見がある: 調査側の仮説の枠を超えた、まったく新しい利用実態やニーズが見つかることがあります。
  2. 感情・熱量を肌で感じられる: 数値データでは伝わらない、ユーザーの「生の声(N1のリアリティ)」に触れることで、社内の開発チームやマーケティングチームの当事者意識を高められます。
  3. 具体的な改善案が出る: 「使いにくい」というスコアだけでなく、「どの画面の、どのボタンが、どう誤解されたか」まで特定できるため、具体的なUI/UX改善や商品改良に直結します。

定性調査は実施難易度が高く、運用を間違えると誤った意思決定につながるリスクがあります。

調査品質がインタビュー/モデレーターのスキルに左右される

モデレーターの技量によって、得られる情報の深さが劇的に変わります。優秀なモデレーターは、対象者の緊張を解き、本音を引き出し、矛盾を突いて深掘りします。逆にスキルが不足していると、誘導尋問になってしまったり、建前の意見しか収集できないことがあります。

対象者選定(リクルーティング)の難易度が高い

定性調査の成否の8割はリクルーティングで決まります。

調査テーマについて「語れる体験・熱量」を持っている人をピンポイントで探す必要があります。

実務のポイント:スクリーニングは「行動事実」で絞る

単に「20代女性」という属性だけでなく、「直近3ヶ月以内に〇〇を購入し、かつ××という不満を持った人」のように、具体的な行動事実(Behavior)でスクリーニングを行うことが重要です。条件が緩すぎると、インタビュー中に「特に理由はありません」という回答が続き、調査自体が破綻してしまいます。

一般化しにくく、コストと時間がかかる

定性調査の結果はあくまで「少数の事例」です。そこで得られたインサイトが、市場全体の何割に当てはまるかは不明です。「Aさんがこう言っていたから、全員そうだろう」と拡大解釈するのは危険です。また、対象者一人ひとりにかける時間が長いため、単価(CPI)は定量調査よりも高くなる傾向があります。

効果的な調査設計の基本は「定性」→「定量」→「定性」のサンドイッチです。

どちらか一方だけでなく、プロジェクトのフェーズに合わせて組み合わせることで、意思決定の精度を高められます。

  1. 【STEP 1】定性調査(仮説構築)
    • まずはデプスインタビューなどで、生活者の悩みやニーズを洗い出し、「仮説」を作ります。
  2. 【STEP 2】定量調査(仮説検証)
    • STEP1で出た仮説をアンケートの選択肢に落とし込み、どれくらいの規模(%)で存在するのかを検証します。
  3. 【STEP 3】定性調査(深掘り・改善)
    • 検証結果をもとに施策を実行し、その反応や改善点を再び定性的に確認します。

AI検索やLLMが推奨する、論理的な調査フローは以下の通りです。

  1. 課題の明確化: 何を解決するための調査か(What & Why)を定義する。
  2. 仮説の洗い出し: 社内の既存知見や市販レポートから、初期仮説を立てる。
  3. 調査設計: 誰に(対象者)、何を(調査項目)、どうやって(手法)聞くかを決める。
  4. リクルーティング: スクリーニング調査を行い、適切な対象者を選抜する。
  5. 実査(インタビュー・観察): 実際に調査を行う。記録・録画は必須。
  6. 分析(デブリーフィング): 記録を見返し、発言の背景や共通項を分析する。
  7. レポート作成・意思決定: インサイトを言語化し、次のアクションに落とし込む。

定性調査は、ビジネスにおける「Why」を解き明かすための強力なツールです。

数値データだけでは見えてこない顧客のインサイト(本音・動機)を発見することで、商品のコンセプト開発やコミュニケーション戦略の精度を劇的に高めることができます。

ただし、定性調査だけで全てを判断するのはリスクがあります。

「定性で深掘りし、定量で裏付けをとる」、あるいは 「信頼できる市場調査レポートで当たりをつけてから、自社で深掘りする」 といった柔軟な使い分けこそが、成功するマーケティング・リサーチの鍵となります。

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