定性調査とは?目的・手法・進め方をわかりやすく解説

定性調査とは?目的・手法・進め方をわかりやすく解説

公開日 2026/02/17

最終更新日 2026/06/09

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定性調査とは、インタビュー、観察、自由回答などを通じて、顧客の発言、行動、感情、背景を深く理解する調査手法です。

定量調査が「どれくらい多いか」「どちらが選ばれやすいか」を数値で見るのに対し、定性調査は「なぜそう考えたのか」「どの場面で不満を感じたのか」「本人も言語化できていない判断基準は何か」を探ります。

新商品開発、ブランド改善、Webサイトやアプリの導線改善、顧客インサイト探索、カスタマージャーニー設計などでは、数字だけでは見えない文脈を把握する必要があります。そのような場面で、定性調査が役立ちます。

ただし、定性調査は市場全体の割合を推計するための手法ではありません。少数の対象者を深く見る調査であるため、得られた仮説は、必要に応じて定量調査で検証します。

この記事でわかること

  • 定性調査の基本的な意味
    定性調査が何を調べる手法なのか、定量調査と何が違うのかを整理できます。

  • 定性調査が使われる場面
    インサイト探索、コンセプト評価、カスタマージャーニー設計、ユーザビリティ改善など、実務での使いどころを理解できます。

  • 定性調査でわかること・わからないこと
    顧客の理由や背景を深掘りできる一方、市場全体の割合や効果測定には向かないことを把握できます。

  • 代表的な定性調査の手法
    デプスインタビュー、グループインタビュー、行動観察、訪問調査、オンラインインタビューの特徴を確認できます。

  • 定性調査の進め方と定量調査との組み合わせ方
    調査目的の整理、対象者条件、インタビューフロー、実査、分析、レポート化までの流れを把握できます。

定性調査とは、対象者の発言、行動、感情、価値観、生活文脈などを収集し、背景にある理由や意味を読み解く調査です。

調査対象者に対して、1対1で話を聞くこともあれば、複数人で座談会を行うこともあります。実際の利用場面や購買場面を観察する場合もあります。

定性調査で扱う情報は、数値ではなく、言葉、行動、表情、迷い、比較の過程、利用環境などです。調査の目的は、全体の割合を推計することではありません。顧客の理解を深め、仮説を作ることです。

定性調査と定量調査の定義

定性調査と定量調査は、扱うデータと目的が異なります。

項目定性調査定量調査
主な目的理由や背景を理解する傾向や規模を数値で把握する
扱うデータ発言、行動、文脈、感情数値、割合、平均値、件数
得意な問いなぜそう思うのかどれくらい多いのか
主な手法インタビュー、観察、座談会アンケート、行動ログ分析、会場調査
主な成果物インサイト、仮説、顧客理解集計表、グラフ、スコア、比較結果

たとえば、「商品Aの購入意向が35%」と分かるのは定量調査です。一方、「購入したい理由は、価格ではなく、失敗しにくそうに見えたから」といった背景を掘り下げるのは定性調査です。

マーケティング・リサーチを行う際は、調査協力者の保護、調査目的の明示、データの適切な扱いも重要です。日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)は、マーケティング・リサーチに対する社会的信頼を維持するため、倫理的・専門的な行動指針を定めています。また、Esomarも調査・データ分析に関する国際的なガイドラインを公開しています。

出典:日本マーケティング・リサーチ協会「マーケティング・リサーチ綱領」https://www.jmra-net.or.jp/rule/prenciple/
出典:Esomar「Guidelines」https://esomar.org/guidelines

※定性調査:発言、行動、感情、生活文脈などをもとに、顧客の理由や背景を深く理解する調査。

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マーケティング実務で定性調査が果たす役割

マーケティング実務における定性調査の役割は、顧客理解の解像度を上げることです。

アンケートやアクセス解析だけでは、数値の背景までは分かりません。CVRが低い、満足度が下がった、購入意向が伸びない、解約が増えた。こうした数字が出たとき、次に必要になるのは「なぜそうなっているのか」の理解です。

定性調査は、次のような場面で使います。

実務上の課題定性調査で見ること
新商品の方向性を決めたい顧客の未充足ニーズ、利用シーン、購入障壁
広告やLPを改善したい訴求の受け止め方、疑問、不安、比較行動
顧客満足度を改善したい不満が生まれた場面、期待とのズレ
ペルソナを作りたい生活文脈、情報収集、価値観、意思決定プロセス
BtoB商談を改善したい稟議、決裁者、導入障壁、社内説明の難しさ

定性調査で得た発見は、商品企画、広告訴求、営業資料、FAQ、導線改善、定量調査の設問設計などに活用できます。

定性調査は、仮説がまだ固まっていない段階や、数値の理由を深掘りしたい段階で使います。

顧客インサイト探索やアイデア発想の場面

新商品や新サービスの初期検討では、顧客自身も明確に言語化できていない不満や要望を探る必要があります。

たとえば、食品メーカーが新しい朝食商品のアイデアを検討する場合、アンケートで「朝食に困っていますか」と聞くだけでは、表面的な回答になりがちです。実際の朝の行動、準備時間、家族構成、買い置きの状況、健康意識を聞くことで、商品アイデアにつながる切り口が見つかることがあります。

この段階では、数値で証明するよりも、仮説の材料を集めることが目的です。

※インサイト:顧客の発言や行動の奥にある本音、動機、判断基準。

コンセプトや施策案の方向性を固める場面

商品コンセプト、広告案、LPの訴求、営業資料などを検討するときにも、定性調査が使えます。

対象者にコンセプト案を見せて、どの言葉に反応したか、どこで疑問を持ったか、何が購入の後押しになりそうかを聞きます。

ただし、「A案とB案のどちらが売れるか」を市場全体で判断したい場合は、定量調査が必要です。定性調査では、案の受け止め方や改善点を確認し、その後に定量調査で規模を検証します。

カスタマージャーニーやペルソナを深掘りする場面

カスタマージャーニーやペルソナを作る場合、属性情報だけでは不十分です。

どのタイミングで課題を感じたのか。どこで情報を探したのか。誰に相談したのか。どの比較軸で迷ったのか。何が最後の決め手になったのか。こうした流れは、インタビューで時系列に聞くと把握しやすくなります。

BtoBでは、利用者、管理者、決裁者、購買部門がそれぞれ異なる判断基準を持つことがあります。定性調査では、関係者ごとの懸念や社内調整の流れも確認できます。

※カスタマージャーニー:顧客が商品・サービスを認知し、比較し、購入・利用するまでの流れ。

ユーザビリティや導線の課題を把握する場面

Webサイトやアプリの改善では、アクセス解析で離脱箇所は分かっても、離脱理由までは分かりません。

ユーザビリティテストや行動観察では、対象者に実際の画面を操作してもらい、どこで迷うか、どの表現を誤解するか、どのボタンに気づかないかを確認します。

たとえば、フォーム完了率が低い場合、項目数が多いことだけが原因とは限りません。入力例が分かりにくい、送信後の流れが見えない、必須項目の意図が伝わらない、といった理由が隠れていることがあります。

※ユーザビリティ:Webサイト、アプリ、商品などの使いやすさ。

定性調査と定量調査は、役割が異なります。定性調査は理由や背景を理解するため、定量調査は傾向や規模を数値で確認するために使います。

データの性質の違い

定性調査のデータは、発言、行動、表情、文脈です。定量調査のデータは、数値、割合、平均値、スコアです。

項目定性調査定量調査
データの形式発言、行動、観察メモ、画像、動画数値、割合、平均値、スコア
分析の仕方文脈を読み解き、共通点や違和感を整理する集計、クロス集計、統計分析を行う
強み背景や理由を深く理解できる全体傾向や差分を把握できる
注意点調査者の解釈が入る設問や対象者条件に左右される

調査目的の違い

定性調査は、仮説を作る、理由を深掘りする、未知の論点を見つける場面に向いています。

定量調査は、仮説を検証する、割合を測る、比較する、効果を確認する場面に向いています。

調査目的向いている手法
顧客の不満の背景を知りたい定性調査
その不満を持つ人が何%いるか知りたい定量調査
新商品のアイデアを見つけたい定性調査
複数コンセプトの購入意向を比較したい定量調査
Webサイトの迷いどころを知りたい定性調査
改善後にCVRが上がったか確認したい定量調査

サンプル数と代表性の違い

定性調査は、少数の対象者を深く見る調査です。サンプル数は、調査テーマや対象者の多様性によって変わります。

定量調査は、全体傾向や属性別傾向を数値で見るため、一定数の回答が必要です。

項目定性調査定量調査
サンプル数少数。深さを重視する多数。傾向や比較を重視する
代表性市場全体の代表とは限らない設計次第で全体傾向を推計しやすい
対象者選定行動経験や課題の濃さが重要属性、条件、回収数が重要
結果の扱い仮説・示唆として扱う数値根拠として扱う

定性調査で「3人が同じことを言った」からといって、市場全体も同じとは言えません。反対に、少数でも濃い体験を持つ対象者に聞くことで、アンケートでは見つからない論点を発見できることがあります。

アウトプットと社内説明の仕方の違い

定性調査と定量調査では、社内説明の仕方も変わります。

項目定性調査定量調査
主なアウトプット発言録、インサイト、仮説、ペルソナ、ジャーニーグラフ、集計表、スコア、比較表
説明の軸顧客の文脈、発言、行動から示唆を伝える数値差、割合、推移から判断材料を示す
向いている資料商品企画、UX改善、仮説整理、営業資料改善経営判断、効果測定、ターゲット比較
注意点少数意見の一般化を避ける数字の背景を読み飛ばさない

定性調査を社内で説明するときは、対象者の発言を引用するだけでは足りません。発言の背景、複数人に共通する構造、施策への示唆まで整理します。

定性調査は、顧客理解に強い手法です。ただし、できることとできないことを分けておかないと、社内の期待値がずれます。

定性調査でわかること

定性調査でわかるのは、顧客の理由、背景、文脈、迷い、違和感です。

わかること具体例
行動のきっかけなぜその商品を探し始めたのか
比較検討の流れどの情報源を見て、何と比較したのか
購入・利用の障壁どこで不安や面倒さを感じたのか
言葉の受け止め方訴求文や説明がどう解釈されたのか
利用環境どの場所・時間・状況で使っているのか
想定外の使い方企業側が想定していなかった利用シーン

たとえば、アンケートでは「価格が高い」と答えた人でも、インタビューで聞くと、実際には「価格そのもの」ではなく「効果が分からないまま社内稟議に出す不安」が障壁になっている場合があります。

定性調査でわからないこと

定性調査では、市場全体の割合や統計的な優劣は分かりません。

わからないこと理由
その意見が市場全体の何%か少数の対象者を深く見るため
A案とB案のどちらが全体で選ばれやすいか統計的な比較には向かないため
市場規模や認知率数値推計には定量調査が必要
施策後の効果量前後比較や大量データが必要
属性別の傾向サンプル数が不足しやすいため

「対象者が強く言っていたから重要」とは限りません。強い発言は示唆になりますが、市場全体にどれだけ広がっているかは、定量調査で確認します。

社内の期待値を調整するポイント

定性調査を行う前に、社内で次の点を共有しておくと、調査後の認識違いを減らせます。

共有すべきこと説明
調査目的仮説づくりなのか、理由の深掘りなのか
判断範囲定性調査だけで決めること、定量確認が必要なこと
対象者条件誰に聞くのか、なぜその人なのか
サンプル数なぜその人数でよいのか
成果物発言録、インサイト、ペルソナ、改善案など
追加調査必要に応じて定量調査や追加インタビューを行うか

定性調査の価値は、「何人が言ったか」だけでは測れません。ただし、社内説明では、どの発言がどの示唆につながるのかを丁寧に示す必要があります。

定性調査には、対話を中心にする手法と、行動を観察する手法があります。目的に合わせて選びます。

手法向いている目的
デプスインタビュー個人の意思決定プロセスや深い理由を知る
グループインタビュー複数人の反応や意見の広がりを見る
行動観察言葉に出ない行動や利用環境を確認する
訪問調査生活文脈や利用実態を現場で見る
オンラインインタビュー遠方の対象者や短期間の調査を行う

デプスインタビュー(IDI)

デプスインタビューは、モデレーターと対象者が1対1で行うインタビューです。

デプスインタビューの目的と適した場面

個人の意思決定プロセス、購買理由、利用時の不満、センシティブなテーマを深く聞きたい場合に向いています。

BtoBでは、導入検討の流れ、社内稟議、比較した競合、失注理由の深掘りに使いやすい手法です。

※デプスインタビュー:1人の対象者に対して、背景や理由を深く聞くインタビュー手法。IDIと呼ばれることもある。

デプスインタビューの進め方の基本

基本的な流れは次の通りです。

  1. 対象者条件を決める
  2. インタビューフローを作る
  3. 冒頭で調査目的と録音・録画の扱いを説明する
  4. 直近の行動事実から聞く
  5. 比較、迷い、不安、決め手を時系列で掘り下げる
  6. 発言の背景や矛盾を確認する
  7. 調査後に発言録と示唆を整理する

「なぜ買いましたか」と直接聞くより、「最初に必要だと思ったのはいつですか」「その後、何を調べましたか」「最後に不安だった点は何ですか」のように、事実から順に聞くほうが深掘りしやすくなります。

デプスインタビューのメリット

メリット内容
深く聞ける個人の背景や意思決定プロセスを追いやすい
話しにくいテーマを扱いやすい周囲の目を気にせず話してもらえる
追加質問しやすい発言に応じて深掘りできる
BtoBにも使いやすい導入プロセスや稟議の流れを確認しやすい

デプスインタビューのデメリット

デメリット注意点
モデレーターの力量に左右される誘導質問や浅い質問を避ける
人数を多く集めにくい調査時間と費用がかかる
一般化しにくい定量調査での検証が必要になる場合がある
分析に時間がかかる発言録の整理と解釈が必要

グループインタビュー(FGI)

グループインタビューは、複数人を集めて行う座談会形式の調査です。

グループインタビューの目的と適した場面

複数人の意見を比較したい場合や、商品コンセプト、広告案、パッケージ案への反応を幅広く確認したい場合に向いています。

参加者同士の会話から、1対1では出にくい意見が出ることもあります。

※グループインタビュー:複数の対象者を集め、司会者が進行しながら意見を聞く調査手法。FGIと呼ばれることもある。

グループインタビューの進め方の基本

  1. 参加者の条件をそろえる
  2. テーマごとに質問を設計する
  3. 全員が話しやすい雰囲気を作る
  4. 声の大きい参加者に偏らないよう進行する
  5. 意見の一致点と対立点を整理する
  6. 調査後に発言と反応をまとめる

グループインタビューでは、参加者同士の影響が起こります。そのため、個人の本音を深く聞くよりも、反応の幅や議論の広がりを見る手法として使うとよいです。

グループインタビューのメリット

メリット内容
意見の幅を見やすい複数人の反応を同時に確認できる
相互作用が起きる他者の発言をきっかけに意見が出る
コンセプト評価に使いやすい複数案への反応を比較しやすい
短時間で複数人に聞ける1対1より効率的な場合がある

グループインタビューのデメリット

デメリット注意点
本音が出にくい場合がある周囲の目を気にするテーマには向かない
声の大きい人に引っ張られる進行役の調整が必要
深掘りに限界がある個人の意思決定プロセスはIDIが向く
参加者条件の設計が難しい属性差が大きいと議論が散らばる

行動観察(エスノグラフィー)

行動観察は、対象者の実際の行動を観察し、発言だけでは分からない利用実態を確認する手法です。

行動観察の目的と適した場面

本人が意識していない行動、言動のズレ、利用環境の制約を知りたい場合に向いています。

たとえば、対象者は「迷わず購入した」と言っていても、実際には棚の前で比較していたかもしれません。アプリの操作では「簡単だった」と言っていても、途中で何度も戻る操作をしている場合があります。

行動観察の進め方の基本

  1. 観察する行動や場面を決める
  2. 観察項目を事前に整理する
  3. 対象者に調査目的と記録方法を説明する
  4. 行動を妨げないように観察する
  5. 行動後に理由や感想を聞く
  6. 発言と実際の行動のズレを整理する

行動観察のメリット

メリット内容
無意識の行動を見られる本人が言語化できない行動を確認できる
利用環境を把握できる実際の場所、道具、制約が見える
UI/UX改善に使いやすいつまずきや迷いを発見しやすい
発言とのズレを確認できる「言っていること」と「していること」を比較できる

行動観察のデメリット

デメリット注意点
観察されることで行動が変わる調査員の存在が影響する
記録と分析に手間がかかる動画や観察メモの整理が必要
プライバシーに配慮が必要同意取得と記録範囲の説明が必要
サンプル数を増やしにくい1件ごとの工数が大きい

訪問調査(ホームビジット)

訪問調査は、対象者の自宅や職場を訪問し、生活環境や利用環境を見ながら話を聞く手法です。

訪問調査の目的と適した場面

日用品、食品、家電、ヘルスケア、住まい関連など、生活環境が利用実態に影響する商材に向いています。

冷蔵庫、収納、洗面所、キッチン、デスク周りなどを見ることで、インタビューだけでは分からない制約や工夫を把握できます。

訪問調査の進め方の基本

  1. 訪問場所と観察対象を決める
  2. 撮影・記録範囲について同意を得る
  3. 普段の使い方を見せてもらう
  4. 使っている理由や困りごとを聞く
  5. 生活動線や保管場所を確認する
  6. 発言と環境の関係を整理する

訪問調査のメリット

メリット内容
生活文脈が見える利用環境や保管状況を確認できる
商品の使われ方が分かる想定外の使い方を発見しやすい
改善点が具体化しやすいサイズ、操作性、収納性などの課題が見える
写真や動画で共有しやすい社内で実態を伝えやすい

訪問調査のデメリット

デメリット注意点
実施ハードルが高い訪問許可や日程調整が必要
プライバシー配慮が必要撮影範囲や個人情報の扱いを説明する
コストがかかる移動、謝礼、記録整理が必要
対象者が限られる協力してくれる人に偏る可能性がある

オンラインインタビュー・オンライン座談会

オンラインインタビューは、ビデオ会議ツールなどを使って実施する定性調査です。

オンライン手法の特性と活用シーン

遠方の対象者に聞きたい場合、短期間で複数人に聞きたい場合、BtoBの忙しい担当者に聞きたい場合に向いています。

画面共有を使えば、Webサイト、広告、資料、プロトタイプを見せながら反応を確認できます。

オンライン手法のメリット

メリット内容
実施しやすい移動が不要で日程調整しやすい
地域を広げやすい遠方の対象者にも聞ける
画面共有が使えるWebサイトや資料の評価に向く
録画しやすい発言録作成や振り返りに使える

オンライン手法のデメリット

デメリット注意点
非言語情報が少ない表情や場の空気を読み取りにくい
通信環境に左右される音声・映像トラブルが起こることがある
生活環境の観察に限界がある現場の文脈は見えにくい
集中が途切れやすい進行時間と質問量を調整する

定性データは、自社で調査する方法、調査会社に依頼する方法、既存レポートを活用する方法があります。

自社で調査を行う

自社の既存顧客、商談相手、解約顧客、ユーザーコミュニティなどに話を聞く方法です。

自社実施に向いているケース

向いているケース
既存顧客の不満を早く聞きたい解約理由、サポート改善、機能改善
営業・CSの仮説を確認したい失注理由、導入障壁、利用定着の課題
予算を抑えたい少人数の顧客ヒアリング
継続的に改善したい定期的なユーザーインタビュー

自社実施のメリット

  • コストを抑えやすい
  • 既存顧客に素早く聞ける
  • 社内メンバーが顧客の声に直接触れられる
  • 商品改善や営業改善にすぐ反映しやすい

自社実施のデメリット

  • 自社に都合よく解釈しやすい
  • インタビュースキルに差が出る
  • 既存顧客に偏りやすい
  • 聞き方によって回答を誘導してしまうことがある

調査会社に依頼する

調査会社に依頼すると、調査設計、リクルーティング、実査、分析、レポート作成まで支援を受けられます。

調査会社に依頼するべきケース

依頼が向いているケース理由
自社顧客以外に聞きたい対象者募集が必要になるため
センシティブなテーマを扱う第三者のほうが本音を聞きやすい場合がある
社内のバイアスを避けたい客観的な進行・分析が必要になるため
経営判断に使う設計品質と説明責任が必要になるため
海外・ニッチ市場を調べたい対象者探索や専門知見が必要になるため

調査会社依頼のメリット

  • モデレーターの進行品質を期待できる
  • 対象者募集を任せられる
  • 第三者視点で分析しやすい
  • レポート化しやすい
  • 社内説明に使いやすい成果物を作りやすい

調査会社依頼のデメリット

  • 費用がかかる
  • 企画から実査まで時間がかかる
  • 調査目的が曖昧だと、成果物も曖昧になる
  • 自社側の意思決定事項を明確にしておく必要がある

モデレーターやリクルーティング品質の見極め方

調査会社を選ぶときは、費用だけで判断しないほうが安全です。

確認項目見るポイント
モデレーター経験対象業界やテーマに近い実績があるか
インタビューフロー質問が誘導的でないか、行動事実から聞けるか
リクルーティング条件調査目的に合う対象者を集められるか
スクリーニング属性だけでなく、行動経験で絞れているか
分析方法発言の羅列で終わらず、示唆まで整理できるか
成果物社内説明に使える資料になっているか

※リクルーティング:調査条件に合う対象者を募集・選定すること。

調査データを購入する

市販の市場調査レポートや既存調査データを活用する方法です。

既存データ購入に向いているケース

向いているケース理由
調査の時間がないすでに整理された情報を確認できる
市場の全体像を先に知りたい市場規模、競合、動向を把握しやすい
海外市場やニッチ市場を調べたい自社で対象者を集めにくい
初期仮説を作りたい既存データをたたき台にできる
社内稟議の根拠が必要出典付きの資料として使いやすい

既存データの活用メリット

市場調査レポートには、市場規模、成長率、主要企業、消費者動向、専門家コメント、セグメント別動向などが含まれることがあります。

ゼロから調査を設計する前に、既存レポートで市場の輪郭をつかむと、追加で何を聞くべきかを整理しやすくなります。

既存データの限界と注意点

既存レポートは便利ですが、自社固有の問いに完全に合うとは限りません。

注意点確認すること
対象範囲自社が見たい市場・地域・顧客層と合うか
調査時点いつのデータか
調査方法定量調査か、定性調査か、デスクリサーチか
セグメント必要な切り口があるか
使える範囲社内利用、引用、二次利用の条件

既存レポートで市場全体を確認し、不足する情報を自社インタビューや追加調査で補う進め方が現実的です。

定性調査のメリットは、顧客の言葉や行動から、数字だけでは見えない背景を理解できることです。

顧客の深層心理やインサイトを把握できる

定性調査では、対象者の発言をきっかけに、行動の背景を掘り下げられます。

「安いから買った」という発言の裏に、「失敗しても後悔しにくい価格だった」「初めて使う商品なので高額品は怖かった」といった心理があるかもしれません。

こうした背景を理解できると、商品設計や訴求の方向性が変わります。

アイデア発想やコンセプト設計に活かしやすい

定性調査では、企業側が想定していなかった利用場面や不満が見つかることがあります。

商品開発の初期段階では、アンケートの選択肢を作る前に、顧客の言葉を集めることが役立ちます。その言葉をもとに、コンセプト案、訴求軸、定量調査の設問を作れます。

仮説構築や課題の洗い出しに役立つ

定性調査は、まだ課題が明確でない段階にも使えます。

顧客インタビューや観察を通じて、課題の候補を洗い出します。その後、定量調査でどの課題がどの程度広がっているかを検証します。

定性調査には限界もあります。少数の対象者を深く見る手法であるため、結果の扱い方には注意が必要です。

調査品質がインタビュー/モデレーターのスキルに左右される

定性調査では、聞き方によって得られる情報が変わります。

誘導質問をすると、対象者は調査側が求める答えに寄せてしまうことがあります。反対に、質問が浅いと、表面的な感想だけで終わります。

避けたい質問と改善例は次の通りです。

避けたい聞き方改善例
なぜ買ったのですか最初に必要だと思ったのはいつですか
この商品は便利ですよね使ってみて、どの場面で使いやすい/使いにくいと感じましたか
価格が高いと思いましたか価格を見たとき、最初に何を考えましたか
どこが不満ですか利用中に手が止まった場面はありましたか

総務省統計局は調査票作成において、回答者にとって明確な言葉を使うこと、回答を誘導しないこと、あいまいな表現を避けることを示しています。定性調査でも同じ考え方が重要です。

出典:総務省統計局「調査票の作成」https://www.stat.go.jp/naruhodo/12_ppdac/plan/plan2.html

対象者選定(リクルーティング)の難易度が高い

定性調査では、誰に聞くかが重要です。

属性だけで対象者を選ぶと、調査テーマについて語れる経験を持っていない場合があります。「20代女性」ではなく、「直近3か月以内に商品Aを購入し、比較検討で商品Bも見た人」のように、行動事実で条件を設計します。

対象者条件が緩すぎると、インタビュー中に具体的な話が出ません。条件が厳しすぎると、対象者が集まりにくくなります。

一般化しにくく、コストと時間がかかる

定性調査は、1人あたりの調査時間が長くなります。発言録の整理や分析にも時間がかかります。

また、少数の対象者から得た結果を市場全体に一般化することはできません。重要な仮説が見つかった場合は、定量調査で広がりを確認します。

バイアスへの配慮と典型的な落とし穴

定性調査では、さまざまなバイアスが入りやすくなります。

落とし穴起こる問題対策
誘導質問調査側の期待に沿った回答が出る中立的に聞く
後付け説明対象者がもっともらしい理由を作る行動事実から聞く
声の大きい人の影響グループ内の意見が偏る進行役が発言量を調整する
自社に都合よく解釈する実態より好意的に読む複数人で分析する
少数意見の一般化市場全体も同じと誤解する定量調査で検証する

定性調査と定量調査は、プロジェクトのフェーズに合わせて組み合わせます。

課題探索フェーズでの使い分け

課題がまだ曖昧な段階では、定性調査が向いています。

顧客の発言や行動から、何に困っているのか、どの場面で不満が生まれるのかを探ります。

ただし、見つかった課題が市場全体に広がっているかは分かりません。事業判断に使う場合は、定量調査で確認します。

コンセプト検証フェーズでの使い分け

コンセプト案がある程度できたら、定性調査で受け止め方を確認します。

どの言葉が伝わるか。どこで誤解されるか。購入意向を下げる不安は何か。こうした点を聞きます。

その後、複数案の優劣や購入意向の割合を確認する場合は、定量調査を行います。

施策実行後の評価フェーズでの使い分け

施策実行後は、まず定量調査や行動データで変化を見ます。

広告認知、CVR、継続率、満足度などの数値が変化したら、その理由を定性調査で深掘りします。

フェーズ定性調査の役割定量調査の役割
課題探索仮説を作る必要に応じて現状を把握する
コンセプト検討受け止め方を深掘りする購入意向や案の優劣を測る
施策実行後変化の理由を確認する効果を測定する

定性→定量の順番で進めるパターン

定性調査で仮説を作り、定量調査で検証する進め方です。

例:

  1. インタビューで顧客の不満や購入理由を聞く
  2. 共通する論点を整理する
  3. アンケートの選択肢に反映する
  4. どの論点が市場全体で多いか確認する

新商品開発、ペルソナ設計、訴求軸の探索に向いています。

定量→定性の順番で進めるパターン

定量調査で傾向を把握し、定性調査で理由を深掘りする進め方です。

例:

  1. アンケートで満足度が低い層を特定する
  2. その層にインタビューを行う
  3. 不満が生まれた場面を聞く
  4. 改善施策を作る

顧客満足度改善、解約理由分析、Web改善に向いています。

限られた予算での組み合わせ方の考え方

予算が限られる場合は、すべてを大規模に行う必要はありません。

状況進め方
まず仮説がほしい少人数のインタビューから始める
市場全体の情報が不足している公的統計や市場調査レポートで全体像を確認する
自社顧客の不満を知りたい既存顧客へのヒアリングを行う
仮説の広がりを見たい小規模アンケートで確認する
海外・ニッチ市場を調べたい市場調査レポートと専門家調査を組み合わせる

▼ 関連記事

定性調査は、話を聞くだけではありません。目的、対象者、質問、記録、分析、社内説明まで設計します。

調査目的とリサーチクエスチョンを整理する

最初に、何を明らかにしたいのかを決めます。

調査目的リサーチクエスチョンの例
新商品開発顧客は現在どのような不満を持っているか
LP改善どの情報が不足し、どこで不安になるか
解約理由分析どの場面で期待とのズレが生まれたか
BtoB営業改善稟議や導入検討で何が障壁になっているか
ペルソナ設計どのような生活文脈や価値観を持っているか

「顧客の声を聞く」だけでは広すぎます。調査後に何を判断するのかまで決めます。

※リサーチクエスチョン:調査で明らかにしたい問い。

対象者条件とサンプル数の目安を決める

対象者条件は、属性だけでなく行動事実で設計します。

例:

  • 直近3か月以内に対象商品を購入した人
  • 商品Aと商品Bを比較したが、商品Bを選んだ人
  • 無料トライアルを開始したが、有料化しなかった人
  • 商談後に失注した企業の担当者
  • 特定の業務課題を現在抱えている人

サンプル数は、目的によって変わります。初期仮説を作るだけなら少人数でも始められます。複数セグメントを比較したい場合は、セグメントごとに対象者を分けます。

調査設計書とインタビューフローを作成する

調査前に、調査設計書とインタビューフローを作ります。

項目内容
調査目的何を判断するための調査か
対象者条件誰に聞くか
手法IDI、FGI、観察、オンラインなど
聞くテーマ購入経緯、比較、利用、満足・不満など
刺激物コンセプト、広告案、画面、資料など
記録方法録音、録画、メモ、画面録画
成果物発言録、示唆、ペルソナ、改善案など

インタビューフローでは、答えやすい質問から始めます。いきなり評価や意見を聞くのではなく、直近の行動事実を聞きます。

モデレーターと役割分担を決めて実査する

実査では、モデレーター、記録係、観察者の役割を決めます。

役割内容
モデレーター質問し、話を深掘りする
記録係発言、表情、行動を記録する
観察者論点や追加質問を確認する
プロジェクト責任者調査目的とのズレを確認する

対象者が安心して話せるように、冒頭で調査目的、記録方法、個人情報の扱いを説明します。

発言録の整理とインサイト抽出を行う

実査後は、発言を整理します。印象に残った発言だけを拾うと、解釈が偏ります。

分析では、次の順番が使いやすいです。

  1. 発言録を整理する
  2. 発言をテーマごとに分類する
  3. 行動事実と解釈を分ける
  4. 複数対象者に共通する構造を見る
  5. 意外な発言や矛盾を確認する
  6. ビジネス上の示唆に変換する
発言解釈示唆
価格より導入後に使えるかが不安だった金額より運用負担が障壁になっている導入支援と活用事例を前面に出す
比較表がなく、社内説明がしにくかった稟議支援情報が不足している比較資料と社内説明用資料を作る
最初は便利そうだが、自分には難しそうに見えた価値は伝わっているが利用不安がある初期設定の簡単さを訴求する

結果をレポート化し社内説明に落とし込む

定性調査のレポートでは、発言を並べるだけでなく、意思決定に使える形にします。

おすすめの構成は次の通りです。

  1. 調査目的
  2. 対象者条件
  3. 実施方法
  4. 主な発見
  5. 顧客の発言・行動
  6. 背景にある解釈
  7. 施策への示唆
  8. 定量調査で検証すべき論点
  9. 次のアクション

社内説明では、「この人がこう言っていた」ではなく、「複数の発言から、導入前の不安は価格ではなく運用負担に集中している」といった構造で伝えます。

定性調査は、顧客の発言、行動、感情、生活文脈をもとに、理由や背景を深く理解する調査です。

インサイト探索、コンセプト検討、カスタマージャーニー設計、ユーザビリティ改善など、数字だけでは判断しにくいテーマに向いています。デプスインタビュー、グループインタビュー、行動観察、訪問調査、オンラインインタビューなど、目的に合わせて手法を選びます。

一方で、定性調査だけでは市場全体の割合や効果量は分かりません。定性調査で仮説を作り、定量調査で検証する。あるいは、定量調査で見えた傾向を、定性調査で深掘りする。このように組み合わせることで、調査結果を事業判断に使いやすくなります。

海外市場やニッチ市場では、自社だけで十分な対象者を集めにくいことがあります。その場合は、市場調査レポートで市場の輪郭をつかみ、必要に応じてインタビューや専門家調査で深掘りすると、調査コストと意思決定スピードを両立しやすくなります。

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