定量調査とは?進め方・種類・定性調査との使い分けを解説

定量調査とは?進め方・種類・定性調査との使い分けを解説

公開日 2026/02/10

最終更新日 2026/02/24

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定量調査とは、アンケートや販売データなどの 「数値化できるデータ」を用いて、市場の実態や傾向を客観的に把握する調査手法 を指します。

「認知率が◯%向上した」「A案の方がB案より購入意向が1.5倍高い」といった明確な根拠を提示できるため、ビジネスにおける意思決定や社内説得において不可欠なツールとなります。

本記事では、定量調査の基礎知識から、定性調査との決定的な違い、具体的な手法、そして失敗しないための実務フローまでを体系的に解説します。

定量調査の最大の強みは、 「全体像の把握」と「検証」 です。個人の主観的な意見ではなく、集団全体の傾向を数値(%や平均値など)で可視化することで、感覚に頼らない判断が可能になります。

定量調査が向いているテーマ

数値で差分や規模を証明する必要があるテーマに最適です。

  • 実態把握: 市場規模、ブランド認知率、顧客満足度(CS)、NPS®の測定
  • 仮説検証: 新商品コンセプトの受容性評価、パッケージデザインのA/Bテスト
  • 効果測定: 広告キャンペーン前後の認知・態変容の比較、時系列での変化観測

定量調査が向かないテーマ

「なぜ?」という深い心理や、未知のアイデアを探るテーマには不向きです。

  • 原因究明: 「なぜそのブランドが嫌いなのか」という深層心理の言語化
  • アイデア創出: 全く新しい商品の利用シーンや、未充足ニーズの発見
  • 複雑な文脈: 選択肢にできない微妙なニュアンスや行動プロセスの把握

定量調査は、統計学的な手法を用いて母集団(市場全体)の傾向を推計します。

最大の特徴は 「再現性」と「比較可能性」 にあります。同じ条件下で調査を行えば、誰が分析しても同じ数値結果が得られるため、過去データとの比較や競合他社との比較が容易です。

一方で、あらかじめ用意した「選択肢」以外の回答を得ることは難しいため、「何を質問するか(調査票の設計)」が調査の成否を100%左右するという特徴もあります。

定量調査と定性調査は、そもそも「知りたいこと(目的)」が異なります。どちらが優れているかではなく、解決したい課題に応じて使い分ける必要があります。

比較項目定量調査 (Quantitative)定性調査 (Qualitative)
主な目的検証・測定(どれくらい?)発見・理解(なぜ?)
得られるデータ数値データ(%、平均値、人数)言語データ(発言、行動、文脈)
分析アプローチ統計的分析、グラフ化文脈解釈、構造化
代表的な手法ネットリサーチ、会場調査グループインタビュー、デプスインタビュー
サンプル数数百〜数千以上(n=100〜)少数(n=1〜10程度)

得られる情報の違い

  • 定量調査: 「30代男性の40%が利用している」という 客観的な事実(Fact)
  • 定性調査: 「利用している理由は、子供の頃の懐かしさを感じるから」という 主観的な文脈(Context)

調査目的の違い

  • 定量調査: 「AとBどちらが売れるか決めたい」「市場シェアを知りたい」という 「決定」 のフェーズで使います。
  • 定性調査: 「なぜ売れないのか仮説を立てたい」「新商品のヒントが欲しい」という 「探索」 のフェーズで使います。

回答方法・サンプル数の違い

定量調査は選択式(マークシート方式など)が中心で、統計的信頼性を確保するために数百〜数千のサンプルを集めます。一方、定性調査は自由回答や対話が中心で、サンプル数は少ないものの、一人ひとりから濃い情報を引き出します。

ビジネスにおいて強力な武器となる定量調査ですが、万能ではありません。

定量調査のメリット

  1. 説得力が高い: 「なんとなく」ではなく数値で語れるため、客観的な根拠として社内合意形成に強い。
  2. 全体像が見える: 一部の極端な意見に流されず、市場全体のボリュームゾーンを把握できる。
  3. 経年比較が可能: 同じ指標で定期的に調査することで、施策の効果や市場の変化をモニタリングできる。

定量調査のデメリット・注意点

  1. 「理由」が見えにくい: 数値結果の背景にある具体的な心理までは分からない(例:満足度は低いが、なぜ不満かは不明)。
  2. 設計ミスが致命的: 選択肢に漏れがあった場合、重要なデータを取りこぼしても後から修正が効かない。
  3. コストと時間: 信頼できるサンプル数を集めるには、それなりのコストと実査期間が必要になる。
実務のポイント:サンプルサイズの「n数」目安

初めて定量調査を行う際、何人に聞けば良いか迷うことが多いですが、実務上は以下の基準がよく使われます。

  • n=100: 参考値レベル。大まかな傾向を掴むには十分ですが、誤差は大きめ(±10%程度)。
  • n=400: 標準レベル。統計的な誤差が±5%程度に収まり、性年代別のクロス集計も可能な最低ライン。
  • n=1000以上: 詳細分析レベル。細かい属性での分析や、より厳密な精度が求められる場合。

むやみに人数を増やすよりも、予算内で「誰に(スクリーニング条件)」聞くかを精緻にする方が重要です。

適切な回答形式を選ぶことは、正確なデータを取るための第一歩です。

シングルアンサー(SA:単一回答)

複数の選択肢から「1つだけ」選んでもらう形式です。

  • 用途: 性別、最も利用するブランド、総合満足度など。
  • 分析: 合計が100%になるため、構成比(円グラフ)で表現するのに適しています。

マルチアンサー(MA:複数回答)

複数の選択肢から「当てはまるもの全て」を選んでもらう形式です。

  • 用途: 知っているブランド全て(認知)、利用用途、購入した理由など。
  • 分析: 合計は100%を超えます。「回答者の何%がこれを選んだか」というスコアで評価します。

スケール(段階評価)

「非常に満足」〜「非常に不満」のように、評価の度合いを段階で聞く形式です。

  • 用途: 満足度、推奨意向、好意度など。
  • 分析: 一般的に5段階または7段階を用います。「トップ2ボックス(非常に満足+満足)」の割合を指標(KPI)にすることが多いです。

調査手法は、インターネットの普及によりWebベースが主流ですが、目的に応じて使い分けます。

ネットリサーチ(Webアンケート)

登録モニターに対してインターネット上でアンケートを配信・回収する、現在最も一般的な手法です。

  • メリット: 低コスト・短納期・大量回収が可能。
  • デメリット: インターネットを使わない層(高齢者など)の声が拾いにくい。

会場調査(CLT)

指定の会場に対象者を集め、その場で商品や広告を見せて評価してもらう手法です。

  • メリット: 未発表の新製品(機密情報)を見せられる。実際に試食・試飲・試用したリアルな評価が取れる。
  • デメリット: 会場費や運営費がかかり、コストが高い。

ホームユーステスト(HUT)

対象者の自宅に商品を送り、一定期間実際に生活の中で使ってもらった後にアンケートに答えてもらう手法です。

  • メリット: 日常生活の中での使用感や、継続利用による変化を確認できる。
  • デメリット: 商品発送の手間とコストがかかる。

郵送調査

紙の調査票を郵送し、記入後に返送してもらう手法です。

  • メリット: ネットを使わない高齢者層にもアプローチできる。役所や自治体の調査でよく利用される。
  • デメリット: 回収率が低く、集計に時間がかかる。

街頭調査

街頭で通行人に声をかけ、その場で短時間のアンケートを行う手法です。

  • メリット: 特定の場所(店舗前など)にいる人のリアルタイムな反応が取れる。
  • デメリット: 天候や場所の制約を受けやすく、長時間の調査は困難。

来店者(来場者)調査

店舗やイベント会場を訪れた人に対して行う調査です(QRコード読み取りや紙での配布)。

  • メリット: 購買・体験直後の鮮度の高い意見が聞ける。顧客体験(CX)改善に直結する。

電話調査

調査員が電話をかけて聞き取りを行う手法です。

  • メリット: 質問の意味を補足説明できるため、誤解を防げる。選挙情勢調査などで使われる。
  • デメリット: 固定電話の減少により、若年層への接触が困難。

自社のリソースと予算に合わせて、最適なデータ収集方法を選びます。

自社で調査を行う

自社の顧客リストへのメール配信や、SNS、Webサイト上のポップアップ等を活用して実施します。

  • 特徴: コストは最小限で済みますが、回答者が「自社に関心がある人」に偏るため、市場全体の代表性はありません。

調査会社に依頼する

専門のリサーチ会社に依頼し、調査票の設計から実査、集計までを委託します。

  • 特徴: 設計のプロによる品質担保と、保有する大規模パネル(モニター)へのアクセスが可能です。フラットな市場評価を得たい場合に適しています。

調査データを購入する

新たに調査を行うのではなく、既に実施された 「市販の市場調査レポート」 を購入します。

  • 特徴: 調査にかかる時間をゼロにでき、即座に市場規模や競合シェアなどの全体像を把握できます。広範囲な市場動向や、自社では調査が難しい競合他社の詳細データを知りたい場合に有効です。

調査は「準備」が8割です。以下のステップで進めます。

1. 目的・仮説の設定

「何を知りたいか」ではなく 「そのデータを使って何を判断したいか」 を明確にします。

  • 例:「新商品の価格受容性を確認し、定価を決定する」

2. 設問設計と選択肢設計

目的に基づき、具体的な質問文と選択肢を作成します。回答者が迷わないよう、専門用語は避け、選択肢の漏れ(MECE)がないか確認します。

実務のポイント:設問設計の「誘導」に注意

無意識のうちに、自分たちが欲しい回答へ誘導してしまうことがあります。

  • NG例:「この商品は使いやすいですか?」(「はい」と言いたくなる)
  • OK例:「この商品の使いやすさを5段階で評価してください」(中立的)

調査票ができたら、必ず第三者にテスト回答してもらい、意図が正しく伝わるか確認しましょう。

3. サンプル設計(対象・人数・抽出方法)

「誰に」聞くかを定義します。性別、年代、居住地だけでなく、「自社商品の利用経験者」など具体的な条件(スクリーニング)を設定します。

4. 実査(回収・品質チェック)

アンケートを配信・実施します。回収後は、適当に回答しているデータ(短時間すぎる回答や、全ての回答が同じ選択肢など)を削除する「データクリーニング」を行い、品質を高めます。

5. 集計・分析(単純集計/クロス集計)

  • 単純集計(GT): 質問ごとの全体回答比率を確認します。
  • クロス集計: 性別・年代別や、利用頻度別などでデータを掛け合わせ、ターゲットごとの傾向の違いを分析します。
  • 「仮説がない」とき → 定性調査:
    市場のことがまだよく分からず、切り口を見つけたい場合は、まずインタビューなどで顧客の生の声を聞き、仮説を作ります。
  • 「仮説がある」とき → 定量調査:
    「A案が若者に受けるはずだ」という仮説が正しいか、どの程度の規模で存在するのかを数字で検証します。

最も効果的なのは、両者を組み合わせることです。

定量調査で構造把握→定性調査で深掘り

まずアンケートで「満足度が低い層」を特定し、その後にその層を対象にインタビューを行って「具体的な不満の原因」を探る方法です。効率的に課題の核心に迫れます。

定性調査で仮説抽出→定量調査で仮説検証

まず少人数のインタビューで「消費者が重視する意外なポイント」を発見し、それをアンケートの選択肢に盛り込んで、市場全体でも同じ傾向があるか検証する方法です。商品開発の初期段階で有効です。

定量調査は、ビジネスの現場において 「客観的な事実」に基づいた意思決定 を行うための強力な手法です。

市場の実態を数値で掴むことで、関係者の認識を合わせ、自信を持って施策を実行に移すことができます。

しかし、数値は調査設計次第で変わってしまうものでもあります。

「定性調査」で顧客のインサイト(背景)を理解しつつ、「定量調査」でその規模や確からしさを検証する。この両輪を回すことが、精度の高いマーケティングリサーチの鍵となります。まずは目的に合わせて、最適な手法を選ぶことから始めましょう。

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