STP分析とは?目的・やり方・事例をわかりやすく解説

STP分析とは?目的・やり方・事例をわかりやすく解説

公開日 2026/02/17

最終更新日 2026/02/24

タグはありません

STP分析は、マーケティング戦略を立案する上で欠かせない基本フレームワークです。市場を「細分化」し、狙うべき顧客を「選び」、競合の中で自社の「立ち位置」を決めることで、勝てる戦略を言語化します。

本記事では、STP分析の目的と全体像から、実務で迷わない進め方(3ステップ)、活用メリット、注意点、企業事例までを一連の流れで解説します。STPは単なる分析手法ではなく、限られたリソースを成果が出る場所に集中させるための「意思決定ツール」です。

STP分析とは、マーケティング界の権威フィリップ・コトラーが提唱したフレームワークで、Segmentation(市場の細分化)Targeting(標的市場の決定)Positioning(立ち位置の明確化) の頭文字をとったものです。

「誰に(Whom)」「どのような価値を(What)」提供するかを明確にし、競合他社との差別化を図るための土台となります。

  • Segmentation(セグメンテーション): 市場を似たようなニーズを持つグループに分ける
  • Targeting(ターゲティング): 自社の強みが活きる、狙うべきグループを絞り込む
  • Positioning(ポジショニング): ターゲットの心の中で、競合とどう違うかを植え付ける

重要なのは、すべての人に好かれようとしないことです。「誰にでも刺さる商品」は、結果として「誰にも深く刺さらない」ことになりがちだからです。

STP分析を行うことで、漠然とした市場のイメージが整理され、以下の3点が明確になります。

市場の顧客ニーズの分布

セグメンテーションを行うことで、市場にはどのような顧客グループが存在し、それぞれどんなニーズ(不満・課題)を持っているかが可視化されます。

単に「30代男性」といった属性だけでなく、「価格重視派」か「品質重視派」かといった心理的・行動的な分布が見えるようになります。

狙うべきターゲットとアプローチ方針

自社のリソース(ヒト・モノ・カネ)を投下すべき「勝てる市場」がどこかが明確になります。

すべての市場を狙うのではなく、自社の強みが最も発揮され、かつ収益性が見込めるセグメントを特定することで、営業や広告のアプローチ方針が定まります。

競合との差別化ポイントと自社の立ち位置

ターゲット顧客から見たときに、自社が「何において優れているか(No.1あるいはOnly.1)」が明確になります。

価格、機能、サポート、ブランドイメージなど、どの軸で競合と比較されたときに選ばれるべきかが定義されます。

STP分析は、感覚的な意思決定を排除し、組織として論理的な戦略を実行するために役立ちます。主なメリットは以下の4点です。

顧客ニーズを把握できる

市場を細分化する過程で、顧客の抱える具体的な課題やニーズを深く理解できます。

「なんとなく売れそう」ではなく、「この層は〇〇に困っているため、この機能が刺さる」という解像度の高い仮説が立てられます。

自社の強みが明確になる

「ターゲットにとっての価値」という視点で自社を見直すことで、本当の強みが浮き彫りになります。

例えば、技術力が高い企業でも、ターゲットが「スピード」を求めているなら、技術力そのものより「短納期対応」が強みとして再定義される場合があります。

競合との差別化ができる

競合他社と同じ土俵で戦う(価格競争など)のを避け、自社が優位に立てる独自のポジションを見つけられます。

後発企業であっても、大手がカバーしきれていないニッチなポジションを見つけることで、シェアを獲得できる可能性があります。

戦略の方向性が定まる

「誰に、何を、どう売るか」が明確になるため、社内の認識統一が容易になります。

開発・営業・マーケティング部門が共通のターゲット像を持つことで、施策のブレがなくなり、効率的なプロモーション活動が可能になります。

STP分析は、一般的にS→T→Pの順に進めますが、実務では行き来しながら調整することもあります。各ステップの具体的な手順を解説します。

1. セグメンテーション(市場を細分化する)

まずは市場全体を、特定の切り口(変数)を用いてグループ分けします。これを「市場の細分化」と呼びます。

代表的な4つの変数(切り口)

変数名内容具体例
地理的変数 (Geographic)地理的な要因国、地域、気候、人口密度、都市化の進展度
人口動態変数 (Demographic)顧客の属性年齢、性別、職業、所得、家族構成、学歴
心理的変数 (Psychographic)価値観やライフスタイル性格、趣味、購買動機、ライフスタイル、社会階層
行動変数 (Behavioral)実際の行動パターン購入頻度、利用シーン、ブランドロイヤリティ、ベネフィット
実務のポイント:BtoBでは「行動変数」を重視する

デモグラ属性(業種・売上規模)だけで分けると、ニーズの濃淡を見誤ります。「課題の緊急度」「決裁フローの複雑さ」「既存ベンダーへの不満度」など、企業の状況や行動でセグメントを切ると、より確度の高いグループが見つかります。

2. ターゲティング(狙う市場を選ぶ)

細分化したセグメントの中から、自社が参入すべきターゲットを選定します。

すべてのセグメントを狙うのではなく、自社の強みが活き、かつ市場としての魅力がある場所を選びます。

ターゲティングの3つのパターン

  • 無差別型: セグメントを無視し、単一の商品を市場全体に投入する(コモディティ商品など)。
  • 差別型: 複数のセグメントに対し、それぞれ異なる商品や施策を提供する(大企業の戦略)。
  • 集中型: 特定の1つのセグメントにリソースを集中させる(中小企業やスタートアップ、ニッチ戦略)。
実務のポイント:6Rで「勝てる市場」か冷静に評価する

ターゲットを選ぶ際は、以下の「6R」の指標を用いて客観的に評価しましょう。

  • Market Scale(市場規模): 事業が成立する十分な規模があるか?
  • Rate of Growth(成長性): 今後拡大する市場か?
  • Rival(競合): 競合が強すぎないか?
  • Rank(優先順位): 顧客にとっての優先度は高いか?
  • Reach(到達可能性): その顧客にアプローチする手段はあるか?
  • Response(測定可能性): 効果を測定できるか?

3. ポジショニング(立ち位置を決める)

決定したターゲット市場において、競合と比較された際に「自社を選ぶ理由」を明確にします。

一般的に、X軸とY軸の2軸を用いた「ポジショニングマップ」を作成して検討します。

ポジショニング軸の選び方

  • 顧客にとって重要な要素であること: 顧客が気にしない軸で差別化しても意味がありません。
  • 自社の強みが発揮できること: 競合が模倣しにくい要素を選びます。
  • 2軸が独立していること: 「価格」と「品質」のように相関関係が強いと、マップ上で一直線に並んでしまい差別化が見えにくくなります。「機能性」×「デザイン性」など、異なる要素を組み合わせます。

STP分析は一度行えば終わりではありません。以下のようなタイミングで定期的に見直しを行う必要があります。

新規事業・新商品の立ち上げ時

最も基本的なタイミングです。プロダクトを開発する前にSTPを固めることで、開発の方向性とマーケティング戦略のズレを防ぎます。

既存施策の伸び悩み・リブランディング時

「広告の反応が落ちた」「競合にシェアを奪われている」といった場合、市場環境の変化により、ターゲットやポジションがずれている可能性があります。現状のSTPを見直し、再定義する必要があります。

定期見直し(市場変化・競合変化がある時)

法改正、技術革新、強力な新規参入など、外部環境(PEST)が変化した際は、既存のSTPが通用しなくなることがあります。四半期や年次での定期的なチェックが推奨されます。

STP分析を形骸化させず、実戦で使えるものにするための注意点です。

STPだけで判断しない

STPはあくまで戦略の一部です。外部環境分析(PEST分析)や自社のリソース分析(SWOT分析)と組み合わせて総合的に判断してください。市場性があっても自社に技術がなければ実現できません。

市場規模・成長率を確認する

ニッチなポジションを見つけても、市場規模があまりに小さければビジネスとして成立しません。政府の統計データ(e-Statなど)や信頼できる業界レポートを活用し、TAM(実現可能な最大の市場規模)を確認しましょう。

分析の順番にこだわりすぎない

S→T→Pの順序が基本ですが、場合によっては「作りたいポジション(P)」から逆算して、それが刺さるターゲット(T)を探すアプローチも有効です。柔軟に行き来しながら整合性をとることが重要です。

データにもとづいて客観視する

「こうあってほしい」という願望でセグメントやターゲットを決めないでください。顧客アンケート、購買データ、公的な統計データなど、客観的なファクトに基づいて判断します。

理想のターゲットを追いすぎない

「お金持ちで、即決してくれて、文句を言わない顧客」は理想ですが、実在しないか、競合が激しいレッドオーシャンであることが多いです。現実的にアプローチ可能で、自社の価値を感じてくれる等身大のターゲットを設定しましょう。

STP分析の前後に以下のフレームワークを組み合わせることで、戦略の精度が高まります。

  • PEST分析: マクロ環境(政治・経済・社会・技術)を分析し、市場の機会と脅威を把握する(STPの前)。
  • 3C分析: 顧客・競合・自社を分析し、成功要因(KSF)を導き出す(STPの前)。
  • SWOT分析: 自社の強み・弱みと外部環境を掛け合わせ、戦略オプションを出す(STPの前中)。
  • マーケティングミックス(4P/4C): STPで決めた戦略を、具体的な戦術(製品・価格・流通・販促)に落とし込む(STPの後)。

有名な企業の事例を見ると、STPがどのように機能しているかがよく分かります。

スターバックス

  • S/T: 単に「コーヒーを飲む人」ではなく、「高収入なビジネスパーソン」や「リラックスしたい都市生活者」をターゲットに設定。
  • P: 家庭でも職場でもない「サードプレイス(第三の場所)」という独自のポジションを確立。単なるコーヒーショップではなく、空間と体験を提供することで差別化しています。

ユニクロ

  • S/T: 年齢や性別で細かくセグメントを切るのではなく、「カジュアルで機能的な服を求めるすべての人」という広いターゲットを設定(LifeWear)。
  • P: 「高品質・低価格・高機能」というポジション。SPA(製造小売)モデルによる圧倒的なコストパフォーマンスと、ヒートテックなどの技術力で差別化しています。

マクドナルド

  • S/T: ファミリー層、学生、ビジネスパーソンなど幅広さと、時間帯(朝マック、夜マック)によるセグメンテーションを併用。
  • P: 「早い・安い・美味しい・どこにでもある」という利便性のポジション。圧倒的な店舗数とオペレーション効率で、他社の追随を許さない地位を築いています。

ExcelやPowerPointで分析を行う際は、以下の項目を網羅したシートを作成するとスムーズです。

  1. セグメンテーション表:
    • 切り口(地理・人口・心理・行動)
    • 各セグメントの特徴
  2. ターゲティング評価シート:
    • 候補セグメント
    • 6R評価(市場規模、成長性、競合など)
    • 選定理由
  3. ポジショニングマップ:
    • X軸・Y軸の定義
    • 自社と競合のマッピング
    • 差別化メッセージ(タグライン)

STP分析は、マーケティング戦略の「背骨」となる重要なプロセスです。

  1. Segmentation: 市場をニーズで分ける
  2. Targeting: 勝てる市場に絞る
  3. Positioning: 選ばれる理由を作る

この3つを一貫性を持って設計することで、迷いのない効果的なマーケティング活動が可能になります。まずは自社の商品・サービスが、具体的に「誰の、どんな課題を、他社よりどう優れた方法で解決しているか」を言語化するところから始めてみてください。

© 2023 ShareFair Inc.