電子部品・半導体業界の市場シェア・動向|規模や今後の予測、主要企業を解説

電子部品・半導体業界の市場シェア・動向|規模や今後の予測、主要企業を解説

公開日 2026/05/21

最終更新日 2026/05/14

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【この記事でわかること】

電子部品・半導体業界のグローバルな市場予測や、TSMCをはじめとする主要プレイヤーの勢力図、そしてAIの台頭によって利益を独占する企業とそうでない企業が分かれる「シリコン・スクイーズ」の現状について。地政学や人材不足といった、現場のリアルなトレンドを交えて解説します。

パンデミック時の深刻な供給不足と、その後に訪れた反動減(在庫調整)。ジェットコースターのような数年を経て、電子部品・半導体業界は今、「生成AI」という新たな長期成長の波に乗ろうとしています。世界の半導体市場は、2030年までに1兆ドルという大台に達する見通しです。

本記事では、信頼できるデータをもとに、市場が今どこに向かっているのか、利益はバリューチェーンのどこに偏っているのかを読み解き、この激動の市場で企業が勝ち残るための現実的な戦略を考察します。

グローバル市場と日本国内の立ち位置

世界の半導体市場は、2021年の約6,000億ドルから、2030年には1兆ドル規模へと拡大していく確かな軌道に乗っています。

電子情報技術産業協会(JEITA)のデータを見ると、2024年の電子情報産業の世界生産額は前年比9%増の約3.7兆ドルに達しました。日本国内企業に目を向けると、2024年の生産額は41.2兆円です。世界の電子情報産業全体で見れば日本のシェアは約7%ですが、「電子部品」という特定セグメントに限れば、実に33%という圧倒的な存在感を放ち続けています。

市場セグメント2024年 規模・実績将来予測(年・規模)市場を引っ張る主な要因
半導体市場全体-2030年: 1兆ドルAIインフラへの投資、自動車の電動化、エッジAI
電子情報産業 (世界)3兆7,032億ドル2025年: 3兆9,909億ドルデータセンターおよびクラウドインフラの拡張
電子情報産業 (日本企業)41.2兆円2025年: 42.9兆円円安による輸出面での追い風、先端部品の需要増
電子部品市場単体2025年推計: 7,010億ドル2030年: 1兆ドル機器の多機能化に伴う、コンデンサ(MLCC)などの搭載数増加

出典:電子情報技術産業協会 (JEITA)『電子情報産業の世界生産見通し 2024 (詳細データ)』 出典:McKinsey & Company『McKinsey on Semiconductors 2024

成長を支える「AI」と「クルマの電動化」

この巨大な市場成長を牽引しているのは、大きく2つの要素です。

ひとつは「AIインフラへの一点集中投資」です。生成AIを賢くし、動かすためには、大量の並列計算を行うGPUと、大容量のデータを高速でやり取りするメモリ(HBM)が欠かせません。このAIプラットフォーム向けの市場は、2030年までに563億ドルへと急拡大すると予測されています。 もうひとつは「自動車の電動化」です。EVや運転支援システム(ADAS)の進化により、車1台あたりに使われる半導体の金額が跳ね上がっています。特に、電力ロスを減らす炭化ケイ素(SiC)などの次世代パワー半導体は、引き合いが急増しています。

出典:William Blair『How AI is Revolutionizing Compute and Infrastructure

ファウンドリ市場:揺るがないTSMCの1強体制

半導体の設計会社から製造を請け負う「ファウンドリ」の市場は、台湾のTSMCが事実上の支配者として君臨しています。

企業名(国籍)2024年 第3四半期シェア各社の現状と立ち位置
TSMC (台湾)64.9%世界トップ。最先端の微細化プロセスと高度なパッケージング技術をほぼ独占している状態。
Samsung Foundry (韓国)9.3%最先端を追うものの、良品率(歩留まり)の壁に直面しており、首位との差がなかなか縮まらない。
SMIC (中国)6.0%米国の輸出規制により最先端からは外れたが、中国内の旺盛な内需を取り込み旧世代プロセスで成長。
UMC (台湾)5.0%無理な最先端競争には加わらず、自動車や家電向けの成熟した製造ラインで手堅く稼ぐ戦略。

AI向けの最先端チップを作ろうとすれば、世界中の企業がTSMCの製造枠を奪い合うことになります。この圧倒的な優位性により、TSMCのシェアは2025年に66%まで伸びると見込まれています。

出典:Counterpoint Research『Global Pure Foundry Market Share: Quarterly

メモリと受動部品:日本企業が輝く「職人技」の領域

一方のメモリ市場(DRAMなど)は、AIサーバー向けの特需に沸いています。特にSamsung、SK Hynix、Micronの3社で市場のほとんどを分け合う、極めて強固な寡占状態にあります。

しかし、視点をコンデンサやインダクタといった「受動部品」に移すと、景色は一変します。ここでは日本企業が圧倒的な強さを持っています。

  • 村田製作所: スマホや自動車に欠かせないMLCC(積層セラミックコンデンサ)で世界トップ。
  • TDK: センサやインダクタに強く、電動化の波に乗って高い収益力を誇る。
  • 京セラ: セラミック技術を軸に、航空宇宙や産業機械などの高い信頼性が求められる領域で確固たる地位を築く。

最先端の製造装置さえ買えばある程度作れるロジック半導体とは違い、受動部品は「材料の配合」や「焼き上げる温度」といった、長年の蓄積に基づく職人的なノウハウ(暗黙知)が必要です。これが強力な参入障壁となり、日本企業の高い利益率を守っています。

出典:Counterpoint Research『Global DRAM and HBM Market Share: Quarterly
出典:GlobeNewswire / SNS Insider『Passive Electronic Components Market Size to Hit USD 65.73 Billion by 2035

AI特需の裏側で起きている残酷な「二極化」

半導体産業では今、「シリコン・スクイーズ」と呼ばれる極端な利益の偏りが起きています。

バリューチェーン全体を見渡すと、NVIDIAやTSMCのような「AIブームの中心にいる一握りのトップ企業」が、業界の利益の大半を吸い上げています。一方で、それ以外の多くの半導体メーカーは、過去の過剰在庫の消化や、インフレによるコスト高に苦しんでおり、業界全体で見れば平均的な利益率はむしろ落ち込んでいるのが実態です。同じ半導体業界にいても、立ち位置によって見えている景色が全く違うのです。

出典:McKinsey & Company『Silicon squeeze: AI's impact on the semiconductor industry
出典:Center for Security and Emerging Technology (CSET)『The Semiconductor Supply Chain Issue Brief

新たな主戦場は「後工程(パッケージング)」へ

長年、半導体の性能は「どれだけ回路を細かく描けるか(前工程の微細化)」で決まっていました。しかしその物理的な限界が近づく中、現在は複数のチップをパズルのように組み合わせて性能を引き上げる「アドバンスト・パッケージング(高度な後工程)」に注目が集まっています。

かつては労働集約的で利益が薄いとされていた後工程ですが、今やシステム全体の性能を左右する心臓部となり、TSMC自らが巨額の投資を行って技術を囲い込むなど、激しい覇権争いの舞台となっています。

地政学に振り回される「巨額投資の時代」

現在、半導体メーカーがどこに工場を建てるかを決めるのは、純粋な経済合理性ではありません。業界内で言われる「持続可能性(Sustainability)」「サプライチェーンの安全保障(Security)」、そして各国政府が用意する「補助金(Subsidies)」という3つの要素がカギを握っています。

アメリカのCHIPS法などに代表される各国の手厚い支援策を背景に、2032年にかけて世界の半導体工場への投資は2.3兆ドルという桁外れの規模になると予測されています。ただし、政府の顔色をうかがうためのコンプライアンス対応や、インフレによる建設費の高騰が、企業の財務を重く圧迫している側面も見逃せません。

出典:Boston Consulting Group (BCG)『Attracting Chips Investment: Industry Recommendations for Policymakers

工場の稼働を遅らせる「エンジニア不足」の深刻さ

いくら国が補助金を出して工場を建てても、現場を動かす人間がいなければチップは作れません。実際、2027年までに世界で約6万7,000人ものプロセスエンジニアが不足すると試算されており、アメリカ等ではこれが原因で新工場の稼働が遅れる事態が起きています。

技術面での注目は、基板の内部にコンデンサなどを直接埋め込む「エンベデッド(内蔵型)基板」の台頭です。基板のサイズを小さくしつつ信号の処理能力を上げるこの技術は、日本の部品メーカーにとって、単なる部品売りから抜け出す新たなビジネスチャンスとなっています。

出典:OECD『Economic security in a changing world: Special focus on semiconductor value chains

こうした業界のうねりの中で、企業が次の一手を打つための方向性を整理します。

1. 巨人が手を出せない「後工程の周辺」を狙う

TSMCやIntelがしのぎを削る最先端の回路製造(前工程)に、今から真っ向勝負を挑むのは得策ではありません。狙うべきは、彼らがチップを完成させるために必ず頼らざるを得ない「検査技術」や「後工程の材料」です。 チップが複雑になればなるほど、不良品を弾くための精密な検査・測定ソリューションや、熱を逃がすための特殊な素材・基板の重要性が増します。こうした領域こそ、日本企業が得意とする素材技術やすり合わせのノウハウが活きる主戦場になります。

2. 「単品売り」からの脱却とモジュール化

受動部品や個別の半導体を提供するメーカーは、部品を一つひとつ安く卸すだけのビジネスモデルから抜け出す必要があります。 自社の部品を単体で売るのではなく、それらを組み合わせてひとつの機能の塊(モジュール)として顧客に提案する力が問われます。顧客側の設計の手間を省き、システム全体としての価値を提供できれば、激しい価格競争を避け、しっかりとした利益率(マージン)を確保できるようになります。

Q. 「シリコン・スクイーズ」とは具体的にどういう状況ですか?

A. 一言で言えば「AI特需による利益の極端な偏り」です。NVIDIAやTSMCのようなAIの最前線にいる一部の企業が莫大な利益を上げる一方で、それ以外の多くの企業は在庫のダブつきやコスト高に苦しみ、業界内で勝者と敗者の明暗がはっきりと分かれている現状を指します。

Q. 米中対立はサプライチェーンにどう影響していますか?

A. アメリカの規制によって、最先端の製造装置を中国に輸出できなくなりました。その結果、中国は規制対象外である「旧世代(成熟ノード)」の半導体製造に猛烈な勢いで投資を集中させています。他国の企業にとっては、安全保障に配慮したサプライチェーンの引き直しに巨額のコストがかかる状態が続いています。

Q. 今後、新規参入や投資のチャンスがあるのはどこですか?

A. 従来の「前工程(いかに細かく回路を描くか)」ではなく、出来上がったチップをどう組み合わせるかという「高度な後工程(アドバンスト・パッケージング)」の周辺領域です。それに伴う特殊な材料、ガラス基板、精密な検査装置などの需要がこれから本格的に立ち上がってきます。

電子部品・半導体業界は、コロナ禍の混乱期を抜け、AIインフラの構築という極めて巨大な需要を取り込むフェーズへと入りました。

やみくもに規模を追うだけの消耗戦では、最先端を走る一部の巨人に太刀打ちできません。自社の強みを活かして「高度な後工程の材料・検査」に特化するか、あるいは「モジュール化」によって顧客にとって替えのきかない存在になるか。地政学的なリスクを冷静に見極めながら、自社の戦う土俵を絞り込むことが、これからの市場を生き抜く絶対条件となるでしょう。

※ 本記事は公的機関等のデータに基づく業界概論を解説したものですが、常に変化する市場動向における情報の正確性を保証するものではありません。最終的な事業判断につきましては、情報の利用による損害等を含め、当社は責任を負いかねますのでご自身の責任にてお願いいたします。

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