通信業界の市場シェア・業界動向 | 規模や今後の予測、主要企業を解説

通信業界の市場シェア・業界動向 | 規模や今後の予測、主要企業を解説

公開日 2026/05/12

最終更新日 2026/05/12

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【この記事でわかること】

世界の通信業界の市場規模と将来予測、主要プレイヤーの市場シェアをはじめ、バリューチェーンにおける利益源泉の変化や、AI-RAN、事業分離(NetCo/ServCo)といった最新の戦略トレンドを解説します。

いま、通信業界は過去に類を見ないほど大きな転換期を迎えています。クラウドやIoT、サイバーセキュリティを含む「広義の通信市場」が力強く成長を続ける一方で、従来のビジネスの柱であった「回線提供(狭義の通信サービス)」は、完全なコモディティ化という厳しい現実に直面しています。

本記事では、国内外の各種調査データに基づき、通信市場の現状と今後の予測、利益を生み出す構造の変化、そして各社が直面している本質的な課題について掘り下げていきます。

グローバル市場と日本国内の市場規模推移

広範なITサービスを含む世界の広義の通信サービス市場は、2025年の2兆957億ドルから、2033年には3兆5,843億ドル(年平均成長率:7.1%)へと拡大すると予測されています。日本国内の市場も、企業のDX需要などに支えられ、2024年の1,178億ドル(約17兆6,000億円)から2029年までに1,498億ドル(年平均成長率:4.9%)へ成長する見込みです。

ここで注目すべきは、成長を牽引しているのが「回線(コネクティビティ)そのもの」ではないという点です。事実、基礎的な回線収入を中心とする狭義の通信市場の成長率は2.8%(2029年までの予測)と、インフレ率すら下回る水準にとどまっています。データ消費量が爆発的に増えているにもかかわらず、価格競争によってARPU(ユーザー1人あたりの月間売上高)は伸び悩んでおり、業界の成長はB2B向けの高度なデジタルサービスに依存しているのが実態です。

出典:PwC『Perspectives from the Global Telecom Outlook 2024-2028

市場セグメント別のシェアと成長領域

日本市場において、今後の牽引役として特に期待されているのが「5G関連のインフラとエンタープライズ向けデバイス」の領域です。各セグメントの推計規模と予測は以下の通りです。

市場セグメント2024/2025年 推計規模将来予測年・規模CAGR主な成長ドライバー
グローバル通信サービス (広義)2兆957億ドル (2025年)2033年: 3兆5,843億ドル7.1%5Gインフラ展開, IoT, クラウド, B2BマネージドIT
グローバル通信収益 (狭義)1兆1,500億ドル (2024年)2029年: 1兆3,200億ドル2.8%データ通信量の増加(ただしARPUは横ばい)
日本国内通信市場全体1,178億ドル (2024年)2029年: 1,498億ドル4.9%企業のDX推進, スマホ普及率の上昇, IoT/M2M
日本5Gインフラストラクチャー43億ドル (2024年)2033年: 553億ドル32.9%5G SAへの移行, 人口カバー率100%に向けた投資
日本5G FWA (固定無線アクセス)-2030年: 120億ドル42.2%光回線の代替, 企業向けの即時ネットワーク構築

政府が掲げる「2030年度末までの5G人口カバー率ほぼ100%」という目標もあり、特にローカル5G(プライベート5G)やFWAといった、ニッチでありながら利益率の高い市場が着実に立ち上がりつつあります。

出典:Mordor Intelligence『Japan Telecom Market Size & Share Analysis

グローバル売上高ランキング トップ企業(2024年推計)

世界の通信事業者(オペレーター)の売上高を見ると、巨大な国内市場を持つ中国とアメリカの企業が上位を占めています。首位は、圧倒的な契約者数を誇る中国のChina Mobile(中国移動)です。

しかし、上位陣に共通して言えるのは「事業規模の大きさが、必ずしも株主価値の持続的な向上につながっていない」という悩みです。各社の売上規模と最近の動向をまとめました。

順位企業名(国籍)売上高 (推計)最近の主な動向と注力領域
1位China Mobile(中国)1,405億ドル世界最大の顧客基盤。国策と連動した5G SA・IoT展開。
2位Verizon(米国)1,340億ドル米国でのプレミアム路線。5G FWAによる家庭用回線の開拓。
3位AT&T(米国)1,224億ドルメディア事業を手放し通信事業へ回帰。光回線と5Gへの投資に集中。
4位Comcast(米国)1,216億ドル自社のケーブル網を軸に、ブロードバンドとコンテンツをセット販売。
5位Deutsche Telekom(ドイツ)1,207億ドル欧州トップ。傘下のT-Mobile USを通じ米国市場でも5Gを牽引。
6位NTT(日本)974億ドル国内の強固な基盤。「IOWN構想」で次世代光通信の主導権を狙う。

出典:Wikipedia『List of telecommunications companies (https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_telecommunications_companies)』
出典:Twimbit『Top 20 global telco update Q3-2023 (https://cdn.twimbit.com/uploads/2023/12/06101157/Top-20-global-telco-update-Q3-2023-Final.pdf)

通信インフラ・機器ベンダーの勢力図

基地局やコアネットワークといった通信機器市場は、依然として少数の大手ベンダーによる寡占状態が続いています。2025年上半期のトップは中国のHuawei(華為技術)で、実に31%のシェアを握っています。

欧米を中心とした排除の動きや半導体の輸出規制といった逆風にもかかわらず、Huaweiは新興国での価格競争力などを武器に、中国市場を除いたグローバルシェアでも首位(21%)を維持しています。これにNokia(13%)、Ericsson(12%)が続くという構図です。

一方、日本の国内市場に目を向けると、NTTドコモの「IOWN構想」、KDDIの金融・ライフデザイン連動、ソフトバンクの「AI-RAN構想」、楽天モバイルの「完全仮想化ネットワーク」など、各社が単なる料金競争から脱却し、独自の経済圏やテクノロジーを軸にしたシェア争いへとシフトしています。

出典:TelecomLead / Dell'Oro『Huawei hikes share in global telecom equipment market in first half of 2025 (https://telecomlead.com/telecom-equipment/huawei-hikes-share-in-global-telecom-equipment-market-in-first-half-of-2025-delloro-122926)
出典:NTT『ニュースリリース: IOWN APNにおいて1Tbps級光ネットワークの自動設定を実現 (https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/03/31/250331a.html)

通信事業者は長年、3G、4G、5Gと世代が変わるたびに莫大な設備投資を行ってきました。しかし、整備した高速ネットワークの上で実際に大きな利益を上げているのは、プラットフォームを提供する巨大テック企業や動画配信サービスなどのOTT事業者です。通信キャリアはインフラを提供するだけの単なる「土管(Dumb Pipe)」になってしまうのではないかという懸念は、いよいよ現実のものとなりつつあります。

この状況を打開するため、先進的な企業は自らをテクノロジー企業(Techco)へとアップデートさせ、次のような領域へ利益の源泉を移し始めています。

  1. B2B向けITサービス: 回線の提供を入り口として、クラウドへの移行支援やセキュリティ対策など、付加価値の高いサービスをセットで提案するモデル。
  2. ネットワーク・スライシング: 遠隔医療や自動運転など、「絶対に遅延してはいけない」「一定の速度が必ず必要」といった用途に対し、品質を保証する代わりにプレミアムな料金をいただくモデル。
  3. ローカル5G: 工場や港湾など、限られた敷地内に安全で独立した独自のネットワーク環境を構築するエンタープライズ向けのビジネス。

もはや「通信の量や速度」だけを売る時代は終わり、「安全性や特定の用途に特化した価値」をいかに提供できるかが、利益率改善の鍵を握っています。

出典:BCG『The 2024 Telco Value Creators Report: A New Formula for Success (https://www.bcg.com/publications/2024/new-formula-for-success)
出典:McKinsey & Company『The future of telcos: Mapping the routes to renewed success

現在の通信業界を取り巻く環境において、無視できないのが「地政学的リスク」と「AIの急速な進化」という2つの波です。

まず、米中対立などを背景に、サプライチェーンを特定のベンダーに依存しない「Open RAN」の導入が国レベルで推進されています。データセンターへの投資が過熱する中、企業は単なるコスト削減ではなく、「いざという時に止まらない(レジリエンスのある)」調達網の構築を迫られており、これが一時的なコスト上昇の要因にもなっています。

出典:BCG『Cost of Resilience: The New Supply Chain Challenge

そして技術面での最大のトピックが、「AI-RAN」の台頭です。これまで通信処理だけを行っていた基地局の設備に汎用的な高性能サーバーを導入し、「通信処理」と「AIの推論処理」を同時に行わせるという画期的な仕組みです。今後、自律的に動くAIや自動運転車が普及すれば、ネットワークへ送られるデータ(アップリンク)は爆発的に増えるため、インフラの在り方そのものを見直す時期に来ています。

出典:SoftBank Corp.『次世代社会インフラ構想とAI-RAN / AITRAS ホワイトペーパー (https://www.softbank.jp/en/corp/technology/research/topics/122/)』
出典:McKinsey & Company『The top trends in tech 2025 (https://www.mckinsey.com/~/media/mckinsey/business%20functions/mckinsey%20digital/our%20insights/the%20top%20trends%20in%20tech%202025/mckinsey-technology-trends-outlook-2025.pdf)』

これらの動向を踏まえ、通信業界で事業の成長や新規参入を模索する企業が検討すべき、2つの方向性をまとめました。

1. 組織の分離(NetCoとServCo)による身軽な経営

巨額の投資が必要な「インフラ事業(NetCo)」と、顧客のニーズに合わせて素早く動く必要がある「サービス事業(ServCo)」を、同じ組織の枠組みで管理し続けるのは限界が来ています。 事業を切り離し、インフラ設備をオフバランス化して資金を調達することで、AI開発や企業向けサービスといった本当に成長する分野に資金を集中させる経営判断が求められています。

2. 「AI-RAN」による基地局の新たな収益化

全国に張り巡らされた基地局は、これまで維持費がかかるだけの「コストセンター」でした。しかしAI-RANの考え方を取り入れれば、基地局を各地に点在する小さなデータセンター(エッジコンピューティング環境)として活用できます。自動運転やスマートシティ向けの計算資源として外部に提供できれば、基地局そのものが利益を生む「プロフィットセンター」へと生まれ変わる可能性を秘めています。

成長が見込める領域はどこか?

個人向けのスマホ回線などは成長が鈍化していますが、法人(B2B)向けの「ITインフラの運用代行」「ローカル5Gの構築」「用途に合わせたネットワークの品質保証(スライシング)」といった領域は、依然として高い成長率と利益率が期待できます。

「土管化」問題の要点は何か?

通信事業者が莫大なコストをかけてネットワークを構築・維持しているにもかかわらず、そのインフラを活用して大きな利益を上げているのは上位レイヤーのIT企業(動画配信やクラウドサービスなど)である、という収益構造の偏りです。

AI-RANはなぜ注目されているのか?

これまで通信のやり取りにしか使っていなかった基地局の設備を、AIの処理にも使えるようにする技術だからです。これにより、通信事業者は「回線を貸す」だけでなく「AIの計算能力を貸す」という新しいビジネスモデルを展開できるようになります。

世界の通信業界は、単に「データの通り道」を提供するビジネスから、AIやデータを活用するための「知的なプラットフォーム」を提供するビジネスへと、その姿を大きく変えようとしています。

既存のパイを奪い合うだけの価格競争から一歩抜け出し、インフラとサービスを分離して資金効率を上げるアプローチや、法人向けのローカル5G、そしてAI-RANによる新たな収益化の道筋を探ることが、これからの通信業界を生き抜くための重要なテーマとなるでしょう。


※ 本記事は公的機関等のデータに基づく業界概論を解説したものですが、常に変化する市場動向における情報の正確性を保証するものではありません。最終的な事業判断につきましては、情報の利用による損害等を含め、当社は責任を負いかねますのでご自身の責任にてお願いいたします。

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